215人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ
◆◇◆
その翌日、昼食の時に早速仲間内にこの事を相談した。
「海か。俺はあまり経験がないな」
そう言うのはランバートだ。こいつこそ旅行経験は豊富だろうと思ったのだが。
「意外。海嫌い?」
「そういうんじゃないんだけれど。大体母のお供が多かったからさ、日焼けする場所はあまり行ってないんだ」
「あぁ……」
ほぼ全員が納得の話である。
「俺はあるよ、海。前にウェイン様が第二引き連れて海に連れてってくれたから」
「えっ、俺知らない」
「ランバートは補佐してたしさ。でも結局砂浜でビーチフラッグやりまくって、訓練と変わらなかった」
チェスターががっかり顔でそんな事を言う。
「海と言えば、リゾートとかが人気だろ? 海に面したコテージに、オーシャンビュー」
「すっごく金かかりそうだ」
トレヴァーの提案は分かるのだが、そういうのはとにかく高い。クラウルに提案すれば二人分の旅費を出すと言うだろうが、それはちょっと勘に障る。これでもちゃんと仕事をしているのだ、自分の旅費ぐらい自分でどうにかしたい。
「そういえば、うちの大将の実家って海沿いの領地で、リゾート地じゃなかったか?」
「ん?」
行儀悪くスプーンを咥えたレイバンが気のない声で言う。それに、ゼロスはふと思い出した。
グリフィスの実家であるハッセ家は海沿いのコディール領という領地を治めている。ここは海沿いであり、綺麗な砂浜が広がるリゾート地でもある。しかも王都から馬車で二日。単騎で行けば一日半くらいだろう。
「領主様にお願いしたらさ、ねじ込めるんじゃない?」
「うっ……だが、そんな無理は」
「無理かどうかは大将に聞けばいいんじゃないのか? おーい! 大将!」
「ドゥー!」
話を聞いていたドゥーガルドが、丁度食堂に入ってきたグリフィスを見つけて立ち上がり、手を振って声をかける。流石にこれにはグリフィスも気づいて、首を傾げながらも近づいてきた。
「なんだ、どうした?」
「大将のご実家って、リゾート地なんすか?」
「ん? あぁ、まぁな。白い砂浜に青い海、海岸近くにはコテージ郡があって贅沢な時間を過ごせるっていうんで有名だ。それがどうした?」
「ゼロスがクラウル様と休暇を過ごす場所を探してるみたいなんで。七月の末か八月の頭辺りに」
「そうなのか? なんだ、それなら実家に聞いてみるぞ」
「いや、でもそれは高いんじゃ!」
なんか、想像していた話から一桁くらいは飛び越えた。まさかのリゾートコテージになっている!
焦って止めようとしたのだが、グリフィスはまったくもって平気な顔をして笑った。
「金の心配なんてしなくたって、うちの実家でコテージ一つは必ず押さえてるからよ。ってか、俺の家が運営元だから融通きくさ。タダでもいいぞ」
「それは流石にダメです!」
何にしてもグリフィスが面倒見良く実家に連絡してくれることになり、行き先はコディール領に決まったようだった。
最初のコメントを投稿しよう!