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逃島って。。
逃島到着まで、体感で20分くらいだっただろうか。途中からウトウトしてしまったので、あまり覚えてはいない。逃島に到着すると、目の前には写真でしか見たことがないような、広大な南国の景色が広がっていた。透き通った雲一つない青空に、きれいなコバルトブルーの海、白くサラサラな砂浜が出迎えてくれた。
ヒロは島に降り立つと、時間を調べるためにスマホを開いた。しかし、ヒロのスマホは電池切れで使えなくなっていた。昨日充電し忘れたらしい。東京にいるときは逐一スマホを開き、LINEやSNSをチェックするのが習慣だったから、全く使えなくなったことで一瞬不安に駆られた。しかし、
「どうせ一人になりたかったんだし、たまにはスマホが使えなくてもいいかな。」という具合に、すぐに受け入れることができた。
以前見たネット記事によると、島は一周ゆっくり歩いても1時間程度で、それほど大きくないらしい。ヒロは、まずこの島をあてもなく歩いてみることにした。
ボーッと歩いていると、時の流れが本当にゆっくりと感じられ、リラックスできる。何かしなければならないこともない。ただ自然に身を委ねていればいいのだ。
「ああぁ、ずっとここにいたいなー。」ヒロは心からそう呟いた。
なんだか腹が減ってきた。お昼時だろうか。スマホは電池切れで、時計も持ち合わせていないため、今何時なのかすらわからない。
「食堂とかないのかな。」また呟いた。
しかし、島を一周歩いても食堂らしきものは見当たらず、果たしてどうやって空腹をしのげばいいのか、ヒロは考えた。
「そうだ、海で探そう。」そう思い立った。
ヒロは都会暮らしが長く、今まで釣りや網で魚を捕まえた経験は、幼少期に家族で出掛けた数回だけだ。当然、逃島には竿も網もないため、とりあえず海に近づいたが、何もできず途方に暮れた。
「魚取れるはずないよな。てか捕まえたとしてどうやって料理すればいいんだろう。」先のことを考えるとますます途方に暮れてしまう。
ヒロはテトラポットに腰掛け、ボーッと海を眺め続けた。すでに夕日が沈みかけ、夜が近づこうとしていた。
そこでふと、海岸線を眺めていたヒロは一筋の明かりを見つけた。
「明かり!もしかして、人かな?」その時、わずかな希望が湧いた。誰かいるならご飯を恵んでくれるかもしれない。
そう考えたヒロは、その明かりに向かって歩き出した。
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