サラの物語

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サラの物語

時は2040年。サラ(28才)は飲料メーカーの営業職として、忙しくも充実した日々を送っていた。 IT技術は凄まじい早さで進化をとげ、営業といえど、以前の飛び込み営業や直接顔を合わせての商談などはあまり多くなく、リモートワークで成り立つ世の中だ。出社するのは月に一回の営業会議だけで、あとは自宅やカフェを活用し、仕事に取り組む。そして、必要があればお客様訪問をするといった形だ。サラは人一倍頑張り屋な性格で、リモートワーク主体ながら暇を見つけては取引先を訪問し、商品の良し悪しや最近の動向をヒアリングするマメな仕事ぶりだった。給料は歩合制で、やればやるだけ稼げるのがサラにとってはモチベーションになり、常に営業成績はトップクラスだった。  しかし、サラは仕事中心で頑張り続けた結果、憂鬱な気分になることが徐々に増えていった。そして、どこか遠くへ逃げてしまいたいと思うようになった。最初は夢中でやっていた仕事も、その頃には「やらなければ」という義務感に変わり、やりがいがなくなっていた。  そんな時、サラはネット記事で「逃島」の記事を見つけた。そこに行くことで、仕事に追われる日々から逃げられる気がした。東京では出会えない、大自然に触れたかった。そう思い立ったサラは迷うことなく、逃島へと向かっていた。  サラと逃島との出会いは、サラの仕事へのモチベーションを取り戻す、大きなきっかけになった。都会では味わえない、豊かな自然ときれいな海に囲まれた生活はかけがえのない時間となった。島ではパソコンが使えないため、島にいる間はゆっくりと過ごすことに集中する。そして、現実世界に戻ったら全力で仕事に取り組む。サラは逃島を利用し、2拠点での生活を送っていた。  サラはこの日も週に一度の逃島での生活の日だった。いつものように焚き火をし、昼間に海で釣った魚と島で取れた野草や、キノコを煮込み、晩御飯の支度をしていた。
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