君を幸せにする為に、僕に出来ること

2/10
前へ
/10ページ
次へ
テスト用紙が返されて、右上に97点と書いてあって急に人生に面白味を無くしてしまった気がした。 「お前なら、もうワンランク上の高校でも目指せると思うぞ」 大人の身勝手な言葉。 「いえ…。僕、別に勉強したいとかじゃないんで」 夢なんてないから、『志望校』なんてない。 これから続く未来が想像できない。 部活は何と無く陸上部に入ったけど、先日の総体で引退した。特にこれという成績を残したわけではない。買ったユニフォームやスパイクがこれからゴミになると言うだけだった。 「まぁ、どうしてもこの高校に行きたいって言うなら、それもいいだろう」 「……」 そんなんじゃなくて。 そんなものはない。 “どうしても”こうしたい、なんて強い意思、僕にはない。 『あーっ!お前、自慢げに点数隠さないとこ、嫌味だろ』 毎回テストの度につっかかってくるクラスメイトがいる。彼はテストの右端を折り曲げて点数を見えないようにしていた。誰かに見られるかも、なんて自意識過剰だ。 彼に絡まれるのはめんどくさいな、といつも思う。 でも或いは『真剣に生きている』って彼みたいな人の事を指すのかなと思う。 淡々とした二者面談が終わり、解放されて教室を出た。 「なんて言われた?」 次の順番を待っていた女子が不安そうに僕に訊く。 「別に。志望校変えなくていいのか、とか。そういう話だったよ」 「わー!私とじゃ、成績全然違うもんね…!どうしよう私、『このままじゃ厳しい』とか言われたら、立ち直れるかなっ……」 「…………ガンバッテ」 彼女のそれはまるで一人言のようで。 実際、そうだったのだと思う。僕の返答なんてなんでもよかったのだ。 勝手に不安になって、勝手に僕と自分とのラインを引く。この会話にどれ程の意味があるのか。 先程の質問だってそう。どんな話をしたか、なんて。人によって違うだろうに。僕の話を聞いたって、参考になるわけでもない。 世界は、無駄なことで溢れている。 …気がする。 僕はいつも、そう思う。 例えば、此処に僕が居る意味だってそう。 誰のなんの役にも立てていないけど、存在している意味って、あるの?
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加