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テスト用紙が返されて、右上に97点と書いてあって急に人生に面白味を無くしてしまった気がした。
「お前なら、もうワンランク上の高校でも目指せると思うぞ」
大人の身勝手な言葉。
「いえ…。僕、別に勉強したいとかじゃないんで」
夢なんてないから、『志望校』なんてない。
これから続く未来が想像できない。
部活は何と無く陸上部に入ったけど、先日の総体で引退した。特にこれという成績を残したわけではない。買ったユニフォームやスパイクがこれからゴミになると言うだけだった。
「まぁ、どうしてもこの高校に行きたいって言うなら、それもいいだろう」
「……」
そんなんじゃなくて。
そんなものはない。
“どうしても”こうしたい、なんて強い意思、僕にはない。
『あーっ!お前、自慢げに点数隠さないとこ、嫌味だろ』
毎回テストの度につっかかってくるクラスメイトがいる。彼はテストの右端を折り曲げて点数を見えないようにしていた。誰かに見られるかも、なんて自意識過剰だ。
彼に絡まれるのはめんどくさいな、といつも思う。
でも或いは『真剣に生きている』って彼みたいな人の事を指すのかなと思う。
淡々とした二者面談が終わり、解放されて教室を出た。
「なんて言われた?」
次の順番を待っていた女子が不安そうに僕に訊く。
「別に。志望校変えなくていいのか、とか。そういう話だったよ」
「わー!私とじゃ、成績全然違うもんね…!どうしよう私、『このままじゃ厳しい』とか言われたら、立ち直れるかなっ……」
「…………ガンバッテ」
彼女のそれはまるで一人言のようで。
実際、そうだったのだと思う。僕の返答なんてなんでもよかったのだ。
勝手に不安になって、勝手に僕と自分とのラインを引く。この会話にどれ程の意味があるのか。
先程の質問だってそう。どんな話をしたか、なんて。人によって違うだろうに。僕の話を聞いたって、参考になるわけでもない。
世界は、無駄なことで溢れている。
…気がする。
僕はいつも、そう思う。
例えば、此処に僕が居る意味だってそう。
誰のなんの役にも立てていないけど、存在している意味って、あるの?
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