2人が本棚に入れています
本棚に追加
ご明察!
今度はまるで、そんな風に笑う。嬉しそうに頷いて、選び取った一口サイズのチョコレートを開けた口に投げ入れた。
「エーくんがさ、心に傷を負う度に僕の怪我が増えるんだ。このままじゃ、死んじゃうよ。だからどうか、僕を殺してしまわないで」
その言葉を最後に。
ふっと、まるで始めからそこに誰も居なかったかのように、少年は消えた。空気に溶けた。
僕は目を見開いて、それから辺りを見回してみたけれど、少年の姿は何処にも無い。
慌てて玄関に行き、靴を見た。少年の履いていた運動靴が無い。
リビングに戻り、少年の為に盛った様々なお菓子の乗った皿を見た。僕は何と無く、各お菓子を五つずつ用意した。三つじゃ少し物足りないし、四つは数が悪い。と思ったので、良く覚えている。
小分け包装されたそれらは、指を指して数えなくても明らかに五つずつあった。チョコレートだけ、一つ足りない。
「…………」
少年は確かに、此処に居た。
それなのに、そんなことはあるはずがない事だった。
僕は暫く固まって、四つになったチョコレートを凝視していた。
最初のコメントを投稿しよう!