6人が本棚に入れています
本棚に追加
男性が俊太郎の視線から逃れるように、みすずに眼を向けた。みすずは男性を見ていなかった。俊太郎をじっと見据えていた。
その一途にも見える表情に、俊太郎の残酷な感情が動かされた。
「続けたければ続けたっていい」
俊太郎が言い終わる前に、男性は転ぶようになりながら部屋を出て行った。
みすずは何も言わずにまだ、俊太郎を見つめ続けていた。瞳にみるみる涙が溢れた。
心が動かない訳はなかった。だがそれはみすずへの怒りではなく、形はどうあれ、いつかこのような日が来ただろうという、苦い自嘲だった。
「どうして泣く。お前が仕向けたんだろう」
「パパ……」
俊太郎はみすずの傍らに腰を下ろした。
最初のコメントを投稿しよう!