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みすずの理屈が、俊太郎には理解できなかった。それが父親的なものを指すのか、恋人的なものを指すのか。世間的にいう「愛人」との違いが、いや、みすずが俊太郎に向けている想いが解らないのだった。
「俺は、どうすればいい」
呻くように、俊太郎は言った。どこにでもいる女だと思っていた。自分の母親がそうだったように、男を渡り歩いて、身を持ち崩すような女だと。
「センセイがあたしの事、どんな風に見てるのか知ってる。あたしも自分の事、そんな女だと思うもん。だからなの。だから、パパになって欲しいの。あたし、センセイに愛されたい。センセイの事好きでいたい。冷たいとこも、投げやりなとこも、意地悪なとこも全部好き。センセイの全部が。ダメ?」
俊太郎は自嘲気味に言った。
「……俺は父親にはなれない。父親がどういうものか、知らないんだ」
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