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だが、みすずが「愛して」というその言葉は、俊太郎には「受け容れて」と聴こえていた。小娘がそこまでして、誰かからの愛を求めている。それは純粋な行動に思えた。身体ではない。心根の純粋さだった。かつて俊太郎が抱いていたものだった。
むしゃぶりつく身体を引きはがして、俊太郎はみすずを見据えた。
「約束を守ろう。俺にもお前が必要なのかもしれない」
俊太郎はみすずの額に口づけた。
またみすずが笑顔のまま、泣き始めた。
「ただ、『パパ』だけはやめてくれ」
「じゃ……センセイ?」
「名前で呼べばいいだろう」
「……恥ずかしいな」
俊太郎は立ち上がり、言った。
「これから二人で、ゆっくり考えていけばいい。喉が渇いた。まずはビールでも飲もう」
踵を返したところで、俊太郎は動きを止めた。背後でみすずがひっ、と小さく悲鳴に近い声を出した。
みすずを抱いた男性が立っていた。
「あんた達、何なんだよ」
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