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ではなぜ、こんな小娘と関係を持ったのか。それは彼女の若さや奔放な振る舞いや、見た目よりも手慣れた営みが魅力的な訳でもなかった。この歳でも若い娘とつき合える。そんな見栄でもないように思う。
そうではなく、俊太郎はただ、自分に自堕落で享楽的な生活を強いているような所があった。自罰的というか、常に自分はいけない事をしている悪い大人なのだ、という証明としてこんな生活をしている気がしていた。
「何が欲しい」
俊太郎が漸く興味を持った素振りをするとみすずは笑顔になり、「聞いてくれる?」と彼の眼を見つめてきた。あどけないこういった仕種も全て、計算づくの作られたものだ。彼女は俊太郎といる間、ずっとこうした芝居を演じていると言ってもよかった。それが見通せないほど、俊太郎は彼女に対して盲目ではなかったし、純粋ではなかった。
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