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「いやだー」
みすずがもう一度笑い声をあげ、俊太郎の膝にそっと手を置いた。ボディタッチをしてくるのは、こういう店ではよくある事だ。そうやって、客をその気にさせていく。
「おじさんはどういうお仕事の人?」
「そこのボクに訊けばいい」
俊太郎は編集者を小突いた。
「俺はどういう仕事してるかってさ」
「え、あ、困るな。小沢俊太郎先生だよ」
みすずが眉を寄せた。
「センセイ?」
もう一人のベテラン風の女の子が口許に手をあてて引き取った。「作家のセンセイよ」
「おじさん、作家なんだ。凄いじゃん」
「ちょっと君、」編集者が慌てている。
「そうさ、おじさんは凄いんだ。自分では全然そんな風に思っちゃいないがな」
「あたし、漢字苦手なンだよね」
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