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みすずがそう言うと、また俊太郎の腿の辺りに手を置いた。思いのほか、冷たい手だと俊太郎は思った。それはこの若い娘の、心根の奥底にあるものが表れているようだった。
「漢字、教えてやろう」
「ホント?」冷たい手に少し、力が籠った。
「あぁ、ホントだ。手取り足取りな」
その後、俊太郎とみすずは何度か同伴を繰り返し、程なく身体の関係になった。
大手町のホテルの景色のよい階を取って、二人で都心の夜景を見た。そんな手順を踏まずとも、この女は陥ちた。そう思いながら、ガウンにくるまるようにしながら窓辺でいつまでも夜景を見ているみすずの小さな身体を見ていた。
「センセイ、いつもこんな風に、女の子を口説くの?」
首だけで振り向き、みすずが訊く。夜風に髪がそよいでいた。
「いや、お前が初めてだ」
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