6人が本棚に入れています
本棚に追加
荷物が運び込まれるのをみすずと眺めていると、男性の方が「娘さんですか?」と尋ねてきた。年齢差から見てそう考えるのが普通だろうし、恐らく男性はみすずに興味を抱いた。みすずのどこか蓮っ葉なところは、男を惹きつける。
「えぇ、そんなもんです」
俊太郎が男性にそう言うと、みすずが後を引き取り、
「父がいつもお世話になっております。また、ご挨拶に伺いますので」
と、殊勝に頭を下げた。
それで男性は言葉の穂先を失い、夫人に肘で小突かれながら、エントランスを歩いて行った。
「おい、どこでそんな挨拶を憶えた」
「センセイが教えてくれたンじゃない」
みすずは悪戯っぽく舌を出して笑い、建物の中に駆けて行った。
明るい陽の光の下で見る彼女はやはり幼く、本当に自分の娘でもおかしくないのだと俊太郎は思った。それが余計に、背徳的な気分を助長した。
最初のコメントを投稿しよう!