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その日の夜、荷物の片づけも早々に、みすずを抱いた。恐らく他の部屋にも、みすずの甲高い芝居がかった声が聞こえたろう。
そういう、分かっていて良くない事を、抗えずしてしまう所が、俊太郎にはあった。
翌朝、まだ早い時間にみすずを残して帰ろうとしている時に、俊太郎はまたあの男性と駐車場で出くわした。少し挑むような眼で、俊太郎を見つめてくる。
「別に仕事場を借りたんでね。これから、娘をよろしくお願いします」
俊太郎がわざと快活な調子で言うと、青年はぎこちない会釈で返した。
「娘さん、学生さんですか」
「いや、もう立派に働いてますよ。ひょっとすると、私より稼ぐかもしれないな」
男性が怪訝な表情をした。
「そういう仕事、って事です」
俊太郎は車に乗り込みながら、男性がどう捉えるだろうかと考えていた。
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