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清は彩さんと会って、満足したらしく上機嫌で帰って行った。
会計時、「博音、お前もなかなかだな。アハハ。」と笑いながら茶化して帰って行った。
ほらみろ、僕の気持ちに気づいているじゃないか。
とちょっと心の中で怒った。
そして、清が帰ってしばらくして、僕たちも一緒にお店を出た。彩さんを送るために。
僕は彩さんを送る途中、どう告白しようかひたすら考えていた。
そして思いついたのが、デートに誘う事だった。
振られるにしても、彩さんとの思い出を作りたかった。
彩さんのマンションに着く頃、
「彩さん、今度の土曜日はお休みですか?」と尋ねた。
「はい。休みですよ。」と言われた。
「もし良ければなんどすけど、その日一緒に出かけませんか?」というととても驚いていた。
無理もないだろう。ただの行きつけの店の店主が突然こんな事を言い出したのだから。
だが、彩さんは、「嬉しいですけど、私でいいんですか?」と言った。
今度は僕が驚く番だ。
今嬉しいと言わなかっただろうか。
聞き間違いではない?もしかしてというと淡い期待が生まれた。
だが、まだ喜ぶには早い。これでダメだったら、ぬか喜びに終わってしまう。
「はい、彩さんと出かけたくて。」と言った。
「分かりました。どこに行くんですか?」と尋ねられ、
「当日のお楽しみです。」
と遠足を楽しみにしている子供にお預けを食らわす教師のように答えた。
彩さんは笑っていた。
とりあえず、僕とのお出かけは嫌ではないみたいで良かった。
「当日は、ちょっと歩くので、スニーカーとかの方がいいかもです。あと、お昼はお弁当を作ろうと思うんですけど、何か苦手なものとかありますか?」
と聞くと、
「いえ、苦手なものはないです。」
と返ってきた。
ならば、ここぞとばかりに腕によりをかけて作ろうと思った。
それから、彩さんを見送り僕も帰路についた。
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