1.この出会いは偶然?

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席へ着くと博音さんは、おしぼりとお冷を出しながら「お疲れですか。お仕事大変ですか?」と尋ねてきた。 私は前回と同じメニューと、パスタを注文し、 「そうですね、後輩がもうすぐ結婚と出産で退職するんです。それで、上司からは大変だろうから引き継ぎやら面倒を見るように言われ、自分の仕事は後回しになっちゃってこんな時間に。」 とやんわり伝えた。実際疲れてる理由はそれだけでは無いような気がするが、考えるだけ無駄だと思い仕事をして忘れようとしている節もある。 そんな私の様子を見て、博音さんは「そうだったんですね、お顔がお疲れ気味だったので…もしかしてと思ってたんですが…」 と苦笑した。 そして、「お仕事の事は僕には分かりませんが、愚痴を聴くくらいなら僕にもできるのでいつでも言ってもらって構いませんよ。」と言ってくれた。 「ありがとうございます。」と私は答えた。 博音さんは、少し考えて、「僕の勝手な意見なので、何言ってんだって思われるかもしれないですけど、もし、ちょっと限界と感じる事があれば、それは出来ないって言う事も時には大事かなと思います。 でないと彩さんの仕事が終わらないですし、またここに来てもらえませんからね。」といたずらっぽく笑った。 「以上、僕の勝手な意見でした。」 「そうですよね、頭では分かってるんですけどね… なかなか…  私普段もなんですけど、なにか頼まれると断れなくてつい引き受けちゃうんです。それで結局自分が苦しくなってちゃ世話ないですよね。周りの子達みたいに、出来ないとか言っちゃうと、自分のせいで今度は別の人がやらされるって思っちゃってついつい自分でやってしまうんです。」 「そうなんですね。  確かに、誰かが断ればそれを他の誰かがしなきゃいけなくなると思うんですけど、それは他の誰かの新たな学びの機会を増やせたと思うと、時と場合によると思いますが、大切な事なのではと思うんです。  どんな事もちょっとの勇気で世界が広がるのではと思います。」 「そうですね、私にはその勇気が足りないなって改めて思いました…  私次はちゃんと言えるように頑張ってみようと思います。 またここに通いたいので。」 「はい、お待ちしてます。  きっとこれまでの彩さんの頑張りを皆んな見てくれてますから、大丈夫だと思いますよ。」と博音さんは微笑んだ。 そして、ハーブティーとバジルソースのパスタに舌鼓を打ち、お店を後にした。
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