1.この出会いは偶然?

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 2回目にお店に行ってから数日後、私は今会社にいる。  そして、後輩の指導をしながら自分の業務をこなしているのだが、  「如月君、この会議の資料を作っておいて欲しいんだが。」と上司が言ってきた。いつもなら私はそのまま引き受けてしまうが、この間の博音さんと話して勇気を出すと決めた。 (ここでやらねば、女が廃る。もとい、ズルズルずっと引き受けちゃう。) 「すみません、部長、ちょっと今仕事が立て込んでて、その内容のことでしたら中田君の方が早いかと思います。もし分からない所があれば、私も手伝いますので。」と言ってみた。 すると部長は、「そうか、いつも君に任せてばかりだったからな、すまない。それなら彼に頼んでみよう。何かあった時は君も見てあげてくれ。」 「分かりました。」 意外にもあっさり、というか部長に謝られてしまった。 因みに、うちの会社は広告代理店なのだが、大手ではないものの、それなりに契約があるため、皆忙しくしている。そして、私のいる営業部は今年、定年退職やら、寿退社など諸々が重なり人手不足なのだ。 そんな皆んな忙しい中で追加の仕事はキツい。これは誰もが思っている事だろう。 だが、 「中田くん。 すまないが、この資料を作っておいて欲しい。次の会議で使いたいやつなんだ。」と部長に言われた中田君は、 「はい、いいですよ。やっときます。」と 中田君はすんなり了承してくれた。 「では、頼んだ。何かあれば、如月君に聞くように。」と部長は言い残して行った。 おかげで私の仕事はいつもより早く終わり、今日はまた「herba」に向かった。 お店のドアを開け、「こんばんは。」と言って中に入ると博音さんは笑顔で迎えてくれた。 いつものカウンター席へと腰を下ろし、今日あったことを報告した。 すると博音さんは微笑んで、「頑張りましたね。」 と言っていつものハーブティーと今日はクッキーを出してくれた。博音さんは「おまけです。」と言って笑った。 思わず、ドキッとしてしまった。 (毎回思うけど、このイケメンの笑顔って破壊力半端ない。無自覚って怖いな。) などと思いさながらハーブティーとクッキーに口を付けた。 ハーブティーはあれからおきに入りなっており、自分でも淹れているが、やはり博音さんに淹れてもらうのが1番美味しく感じる。
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