黒い糸

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黒い糸

 俺が覚えている母の顔はいつも笑っていた。  父を凄く愛していて、二人はいつも一緒だった。  私達は二人で一つなのよと、冗談のように言って、二人で目を合わせて笑っていた。  末端の貴族ながら気位の高い親戚達は、一族中で平民の母をバカにして冷遇していた。  父はいつも盾になって母を守っていた。それでも父のいないところで、チクチクと小さく傷つけられて、母は少しずつ弱っていった。  母は父を愛するあまり、心の傷を隠していたのかもしれない。  いつも不自然なくらい笑っていた。  その裏に隠された悲しみなど、あの頃の俺には分かるはずもなかった。  ただ、美しい母が笑う度に、幸せだと思っていた。  いつまでも、幸せなのだと思っていた。 「子爵の話だと、田舎で好き勝手暮らして遊んでいたらしいけど……。痩せ細って、手は荒れているし……とても遊んでいたようには見えないね」  雇い主のミランに呼ばれて部屋に入った俺は、大きなソファーに座らされて、ここに来るまでの生活について、叔父が書いた書類を見られながら質問を受けていた。 「……叔父の会社が上手くいっていないことは調べれば分かると思いますが、そのことを叔父は言いたくなかったのかもしれません。特に前金は全て自分が手にするわけですから、人から色々言われるのを嫌う人なので……」 「だから、君のせいにしたと……。実際は暮らしは楽ではなかった、ということでいいの?」  俺は自分の事情をどこまで話してもいいものかと考えた。あまりペラペラと話して、やっぱりやっかいな人間だと思われたら、出ていけと言われるかもしれない。  叔父に渡ったお金まで回収されたら大変なことになってしまう。  だから、あまり深くは話さないでおこうと決めた。 「そう……ですね。田舎暮らしはあまり贅沢はできませんから……。贅沢がしたくて仕事が欲しくて……、叔父に頼んだのです。叔父も仕事でお金が必要なので、お互いの利害が一致したというか……」 「それが本音か。贅沢な暮らしがしたかったから、分かりやすくていいじゃないか」  入口のドアに背をもたれるようにして立っていたシオンが口を開いた。 「ここに来るやつはだいたいがそう答える。お前だけじゃない。むしろ、それ以外の答えのやつの方が怪しいくらいだ」  白か黒、シンプルな解答の方が安心するのだろう、実に経営者らしい意見だった。 「うー……ん、そんな単純なもののようには見えないけどねぇ……。まぁいいや、じゃ、服を脱いでよ」  今日の天気の話でもするみたいに、平然と言われてしまい、何のことを言っているか、一瞬理解できなかった。  頭の中で繰り返してから、これが自分の仕事だったとやっと理解して、俺はシャツのボタンに手をかけたのだった。 「うん、変なタトゥーの類いもないし、クスリをやっているような形跡もない。手先は荒れているけど、肌はきめ細かくてしっとりしている。うん、触り心地もよろしい。これでお肉がつけばもっと良くなる。まずまず、合格だね」 「うぅ……」  どうやら聞かされていた検査というのが始まったらしい。シャツを脱がされた俺は、ソファーに座った状態でミランに体をペタペタと触られて、チェックされていた。  くすぐったさに声が出そうになるのを必死で我慢していた。 「ここ……凄い綺麗なピンク色だ。柔らかくなって、赤く色づいたらもっと綺麗になるよ」 「そ……そんな……ところ……」  ミランが触ったのは俺の乳首で、指で軽く触って来たと思ったら、爪を使ってカリカリと掻いてみたり、ぎゅっと引っ張ったりと弄ってきた。  体は小刻みに揺れて、むず痒いくすぐったさに耐えながら、必死に声を押し殺した。 「感じてるね。感度は……良いほうかな。声は我慢したらダメだよ。いつでも淫らに鳴くのが君の役目だ」  真っ昼間から、人に体に触れられるなんて、明らかにおかしい事態だが、我慢しなくてはいけない。  シオンの方を見ると、仕事なのか窓辺の椅子に座って、書類を眺めていた。こちらのことなど一切気にならないようだ。ならば、出ていってくれればいいのに、何故かそこに座っていた。 「君の仕事は世話係だと聞いているだろう。屋敷のことは事足りているから何もしなくていい」 「……何も?……ですか?」 「ああ、世話係は俺達が好きなときに、好きなだけ奉仕するのが仕事だ。どこでもどんな時でもそれに応じること。まぁ、そんなに無理なことはしないよ。期限は決めてないけど、俺もシオンも飽きっぽいから。それに、歯向かったり態度が悪ければそこで終わりにする」 「………分かりました」  ミランから出た言葉は、だいたい叔父から聞かされていた通りだ。性的なことの遊び相手で、満足できなければそこで契約は終了。終了時はそれなりの額が出るらしいし、働きが良ければ臨時で給金をもらうこともできる。 「俺とシオンはね。見ての通り双子だけど、特別な繋がりで結ばれている。ただ性欲を満たすだけでなく、俺達の繋がり加わって欲しいんだよ」  何やらもっと理解を超える話をされて、どう受け止めていいのか分からなかった。しかし、それが仕事であるので、分かりましたと素直に頷くしかなかった。 「……まずは食べるのが仕事だ。そんな骨と皮しかないやつに性欲なんて湧くか!肉をつけろ!」 「は……はい」  書類に目を向けたまま、シオンが話に入ってきた。雇い主はミランであるが、仕事の対象はシオンも入っているので、彼の意見にも従わないといけないのだ。 「ええー……。まぁ、そうだけど。今でもこんなに美味しそうなのに……」 「あっ……ううっ……!!」  ミランは納得できないように、俺の乳首をペロリと舐めて、吸い付いてきた。 「ミラン!」 「ちぇ……分かったよ」  シオンに制されたミランは名残惜しそうにまたペロリと舐めてから、俺のシャツを合わせてボタンを留めてくれた。  まさか、ただの道具でしかない俺の服を直してくれたのは驚きだった。シオンも体を気づかってくれたようで、このお二人は悪い人ではないのかもしれないと、俺はそう思い始めていた。 「ユーリ!」  可愛らしい声に名前を呼ばれて振り返ると、頬を膨らませたアリンが立っていた。  おはようと声をかけると、アリンはもっと頬を膨らませた。 「ごめんね。アリンの仕事を奪いたいわけじゃないんだけど、何もしないのは気持ちが落ち着かなくて……。せめてこれくらい……」  屋敷の洗濯場で洗ったシーツを干していたら、掃除を終えたアリンに見つかってしまった。もう仕方ないわねとアリンはため息をついた。 「何度言っても手伝おうとするんだから……。お二人から止められているわけじゃないし、やりたいならやってくれてもいいけど、ユーリって変わっているわよね」 「へ………?そうかな……」 「そうよ、今までの人はみんな好き勝手過ごしていたわよ。この時間なんて、夜通し飲んでだいたい酔いつぶれてその辺に転がっていたかしら」  ここに来て最初にそれを聞いたら驚いただろうけど、今は納得してしまった。やることがないというのは、それはそれで辛いものがある。主の二人は忙しいし、好きにやってくれと言われたら、だらけてしまうのも無理はない。 「ジェイドさんや、私なんかに命令し始めて、暴れだしたらもう終わりね。そうなると数日でいなくなったわ」  そうなんだと言いながら、シーツを叩いてシワ伸ばして洗濯用のロープにピンと張って干したら、アリンにお見事と言われて手まで叩かれてしまった。 「残りは後少しね。そしたら、ここ任せていい?二階の掃除がまだなのよ」 「もちろん。任せておいて」  ここへ来てもう二ヶ月が経った。  食べるのが仕事と言われて毎日食事と格闘する日々が続いている。  最初は食べ慣れないものばかりで、お腹を壊していたが、最近は食材にも慣れて量も食べられるようになった。  それ以外は何もすることがないので、ひたすら本を読んだり、みんなの仕事の手伝いを申し出て断られつつ、なにかやらせてもらうという感じだ。  全部のシーツを干し終わって、真っ白なシーツが青い空の下、綺麗に並んでいる光景を見て俺は嬉しくなった。やはり、体を動かしていないとどうも調子がでない。  本来の仕事の方は特に何もない。初日に体を触られたくらいで、それから二人を遠目に見ることはあっても、呼ばれることもなく、もちろん向こうからこちらに近寄ってくることもない。  ミランとシオンは一卵性の双子の兄弟で、歳は二十五。父親は昨年亡くなり、母親は子供の頃に失踪したそうだ。  屋敷に働いている者は少ない。それは、二人があまりたくさんの人間に出入りされるのを嫌うかららしい。  その分行き届かないところは、それでいいらしく、庭や屋内に色がなく寂しく感じたのは、手入れが簡単なものでまとめられているからだそうだ。  呼ばれて行くことはあるが、パーティーの類いをここで開くようなことはない。  訪ねてくる人もなく、時間が止まったように静かなところだった。 「そんなところで何をやっているんだ?」  背中から声がかかって振り返ると、金髪に緑の瞳の天使が屋敷の壁にもたれながら立っていた。雰囲気と小さなほくろから、シオンだと判断して俺は頭を下げた。 「申し訳ございません!やることがなくて……俺がアリンにお願いして無理やり手伝いを……」 「それはいい。手伝うなとは言っていないからな……。ここの生活はどうだ?地味すぎて退屈だろう?」 「いえ……、お腹いっぱい食べられますし、寝床は温かいし……静かでとてもいい暮らしをさせていただいています」  顔を上げたらいつの間にかすぐ近くまでシオンは歩いて来ていて、俺の頬を指でつまんで横に伸ばした。 「ううぐっ………」 「だいぶ肉がついたようだな……。まだ細いがそれなりに見られるようになった」  どうやらシオンの基準はクリアしたようだ。強く掴まれたわけではなかったが、シオンにつままれた頬がやけに熱く感じた。 「来い、そろそろ仕事の時間だ」 「は……はい」  シオンが背を向けて歩き出したので、いよいよ本来の仕事が始まるのだと体に緊張が走った。何が起きるか分からない恐怖で足が震えていたが、シオンの背中を見失わないように必死で足を進めた。 「……え?これを……俺がですか?」  さっきまで緊張で汗ばんでいた体から力が抜けて、すっと熱が引いていくのを感じた。  俺の目の前には籠いっぱいに、手紙の束が置かれていた。 「ああ、説明した通りに頼む。担当していた者が急遽田舎に帰ってしまって困っていたんだ。お前も暇そうだから丁度いいだろう」 「はあ……、分かりました」  確かに暇ですと顔に書いてあったかもしれないが、まさかこちらの仕事を頼まれると思わなかった。  手紙は個人用と会社用が混ぜられていてまずそこから分けて、重要な差出人リストに照らし合わせて分類、それ以外の人物や会社のものは開封して、内容ごとに分けるようにと指示があった。  つまりは手紙の整理だ。会社のことなど何も分からない俺に任せていい仕事だとは思わなかったが、やれと言われたらやるしかないので、一呼吸深く吸ってから、山の頂上の一通を手に取った。 「俺は別室で書類を書いているから、午前中には頼む」 「分かりました……」  果たして午前中に終わるものなのかすら分からない。読み書きは問題ないが、それだけでは上手く処理できないとしか思えなかった。  時計が正午を指すころ、最後の一通を置いて言われていたものは全て整理できた。  重要なリストに載った手紙はすでにシオンの執務机に置いてあるし、それ以外は宛先と内容ごとに整理した。  やけに女性からの手紙が多かったのが目についた。内容も確認しないといけないのだが、だいたいがなぜ会ってくれないのか、会いたいといった内容だった。見ているだけで顔が赤くなるような情熱的な手紙もあった。誰かにそんな風に求められたことなどない俺には、恋物語でも読んでいるような感覚だった。 「…………好きです。どうかお返事をください」  俺が言葉にすると陳腐に聞こえてしまうが、実際に女性の口から語られたら、きっと心を揺さぶられるに違いない。  こんなに多くの女性からの求められるなんて、幸せな人生なんだろうと思った。 「…………好きなんて簡単に言ってくれるよね。何も知らないくせに」  集中しすぎていて気がつかなかったのか、ドアのところから声が聞こえて俺は驚きで体を揺らしながら顔を上げた。 「ユーリ、どこにいるのかと思ったら、シオンに使われてこんなところにいるなんて……」 「あ……手紙の整理を頼まれたので……、俺は全然……時間もあったので……」  満面の笑みを浮かべてこちらに向かって歩いてきたのはミランだろう。  今日もシオンと同じ格好をしているので、見分けがつかないが、ミランはやけに機嫌が良さそうに見えた。 「……シオンから許可が出たよ。やっとユーリと遊ぶことができる」  ミランは目を細めて微笑みながら、俺の顔を触れて顎を持ち上げた。  近くで見ると、その美しさは神々が作った作品のように思えた。同じように呼吸をして、同じように笑い、同じ物を食べるような生き物には思えなかった。 「何を考えているの?」 「……とても……綺麗だと……それに……」 「それに?」  懐かしい気がすると口にしそうになって俺は慌てて口をつぐんだ。二人と住む世界が違いすぎるのに、何を言っているんだと呆れられるかと思ったのだ。 「う……嬉しいです。やっと……仕事ができますから」  俺の答えが気に入らなかったのか、ミランは少し顔をしかめた。 「そう……じゃあ、仕事をしてもらおうか……。今すぐここで全部服を脱いで」  少し冷たい口調で言われたが、俺は命令された通りにシャツのボタンに手をかけた。  きっとこういう時、プロなら淫らに脱ぐこともできるだろう。一応知識として図書室にあったその手の本を見て勉強したが、やはり文字だけではいまいち伝わってこなくて、普通に脱ぐことしかできなかった。 「……いいね。全体的に肉がついて骨が見えなくなった。触り心地が違うからね、待ったかいがあったな」  何も纏うものがなく、素っ裸になった俺の周りを舐め回すようにミランは見てきて、満足そうに笑った。  ミランに見られていると思うだけで、肌がぴりぴりしてきて、ぞくぞくとよく分からない感覚が背中を這っていった。  ミランは机の上に置いてあった羽ペンを手に取ると、それで俺の乳首を撫でてきた。  初めはただくすぐったい感覚で早くやめて欲しいと耐えていたが、なんども撫でられていくと敏感になってむずむずとした感覚が生まれてきた。 「……あっ!……んんっ…………!」 「……感じてきたの?少しだけ色づいてきたよ。少し撫でただけで両方とも立ってる。ますます俺の好きな乳首だよ。ねぇ……もっと強くしてあげようか……」 「はっ…………はい………」 「可愛い……真っ赤になって、息も荒くなっているよ……」 「んっああんっ!!」  散々弄られていた乳首を、ミランはぎゅっとつねってきた。その強さに痛みではなく体が壊れてしまいそうな快感が突き抜けて足に力が入らなくなり、シオンの執務机に手をついてなんとか倒れずにすんだ。 「……ユーリ、気づいている?君のここ、もう立ち上がっているじゃないか……。女も知らなかったのに、男に乳首を弄られて大きくするなんて……君は淫乱だね」 「あ……そ……そんな……」 「いいよ。淫乱な子は大歓迎だ。俺がユーリを変えてあげる。いつでも俺のモノを欲しがって涎を垂らして、ここを大きくしちゃう子に……」  そんな獣のような人間になってしまって、果たして元の世界に戻ってまともに生きていけるのか。しかし、どんな人間になってしまったとしても、俺はここから逃げることはできないのだ。 「ここでは道具もないからね。おいで、まずは準備をしないと」  ミランは目を細めて妖しげに微笑んだ。俺は素っ裸のままミランに手を掴まれて部屋を移動することになった。これから何が起こるのか、不安と先ほど生まれた熱が俺の胸の中で混じり合って渦巻いていたのだった。  □□  雪が降った後の白い世界には母の黒髪は目立っていた。冷たい風に吹かれて、長い黒髪が空に向かって広がるようになると、冬の空に吸い込まれていきそうだと思った。  自身の髪を風に遊ばせながら、母は笑っていた。あの事があってから、一度も笑っていなかったのに。そして、母の笑顔は本当に幸せそうだった。  だから、足が動かなくて、手を伸ばすのが遅れてしまった。  舞台に立っていた母は知らなかったけど、もしかしたら、こんな風に見えたのかもしれない。それくらい母は美しく見えた。 「お母様」  俺の呼び掛けに母は鮮やかに微笑んで口を動かした。  そして……………… 「はっ……うぅ……くっ…………」  体を支配する熱に限界を迎えた俺は意識を失っていたらしい。  ベッドの上で丸くなって体の状態を把握しようとしたが、繰り返し訪れる強烈な波がまだ引いていないことに愕然とした。 「だめだ……全然……終わらな……ぁ……はぁ……」  ミランに連れられて来たのは初めては入る部屋だった。ここまで来る間に誰かに裸を見られたら恥ずかしかったが、誰にも会うことはなかった。そこは、屋敷の中でも特に人の出入りがない場所で、普段は近づかないようにと言われていた。  ミランがドアを開くと、部屋の中には大きなベッドがあった。人が何人も寝ても大丈夫なくらいの大きさだった。  そこに俺を寝かせたミランは、しばらく堪能するように俺の体を撫でまわした後、初めてだからまずは準備が必要だと言って、変わった形のワインのコルクのようなものを取り出した。  俺の後孔に何かを塗り込んで滑りをよくした後、指を入れてきた。異物感に汗を流しながら耐えていると見上げたミランは楽しそうに笑っていた。そして先ほどの玩具を俺の後孔に入れてきたのだ。  あまり大きくなかったが、やはり異物感はあった。栓のようなものだと説明してくれて、先端に媚薬を塗ったからしばらくすると良くなるからと、ミランはまた妖しげに微笑んだ。  そして一度萎んだが、すでにまた立ち上がりかけていた俺のぺニスを紐で縛って、自分が戻るまで決して取らないようにと言って部屋から出て行ってしまった。  しばらくすると焼けるような、今まで感じたことがない熱をお尻の奥から感じて、たまらずに俺は歯をくいしばった。  じんじんと血の流れとともに体を支配していく熱はまるで内部から爆発しそうな熱さだった。  俺のぺニスはガチガチに硬くなって立ち上がり、今にもイキそうになっているが、ミランが結んだ紐がそれを許してはくれなかった。  手を拘束されているわけではないので、何度もほどいてしまおうと手を伸ばしたが、ミランの言いつけを思い出して、また歯をくいしばって耐えた。  その間にも後孔からむずむずする感覚が絶えず押し寄せて、爆発しそうなのに解放できない状態に耐えきれなくなった俺は何度も気を失った。  涙と涎を垂れ流しながらシーツに顔をうずめて、また意識を失いそうになっている時、やっとドアがガチャリと開けられる音がした。  昼頃ここに連れてこられて、外はすっかり暗くなっていた。  部屋のランプが付けられて、ぼんやりとした明かりの中に二つの天使の姿が浮かんだ。 「………おいおい。意識飛ばしているじゃないか……。薬を使ったのか?」 「少しだけね。その方が最初だし楽でしょう。ユーリ、俺の言いつけを守って我慢したんだね。えらい子だ」  快感で狂いかけた俺の前にミランの姿がぼんやり浮かんだ。  俺を見る目にみるみる燃えるような火が灯って、いつも涼しげな緑の瞳は火のような色をしているように見えた、 「ふふふっ……、えらいね。ここ……、触らなかったの?可哀想にパンパンになっているね」 「んっ……ああ!!」  ミランに少し指で触れられただけで、快感が体を貫いてもう気が狂いそうだった。 「た……助けて……死んじゃ……、はやく……イキたい……」  息も絶え絶えに言葉を発して、ミランを見上げて、伸ばされていた手に顔をすりよせた。  ゴクリと喉が鳴る音がして、ミランは手早く自分の上着を脱いでシャツの前を開いた。  甘い外見からは想像できない、逞しい体が見えて俺の胸は高鳴った。 「すごく美味しそうだよ、ユーリ。ああ……君が煽るから、俺も熱くなってきたよ」  情欲に燃えた目をしながら、ミランが俺の根本を縛った紐を解くと、今まで溜まっていたものが爆発するようにビクビクと揺れて白濁を撒き散らしながら俺は達した。  しかし達してもまだ、熱は収まることはなく、すぐにドクドクと流れていき、俺のぺニスは萎えることがなかった。 「あ……ひぃ……イったのに……、イったのに……やだぁ……壊れちゃ……あつい………あついよぉ………」 「ユーリ、これを後ろの孔に入れてあげるよ。熱くてたまらないんでしょう。たくさん擦って中にいっぱい出してあげようか」  ミランが自分のぺニスを取り出して俺の前に見せてきた。薄暗い中でも大きくて存在感があった。すでに天に向かって立ち上がり、まるで凶器のような卑猥な形をしていた。  あれが自分の中に入ることなど想像できなかったが、俺の体の奥はめちゃくちゃに熱を散らしてくれる何かを求めていた。 「欲し……欲しいよ……、あついの……めちゃくちゃにして……」  頭を振りながら熱の解放を求める俺の横にいつの間にかもう一人の影があった。 「あれ?シオン、参加しないって言っていたのに……」 「気が変わった。俺も入る」  どうやらシオンもこの狂宴に加わるようだが、熱に支配された俺の頭はそれがどういうことか考えることなど出来なかった。 「ああっ……はやく……俺を壊して……めちゃくちゃに……」  横にいたシオンの腕を掴んでその瞳に訴えると、いつも冷静なシオンもまた燃えるような目をして俺の唇に噛みつくように食らいついてきた。  強引に舌をねじ込まれて口を開けさせられると、シオンにまるで口内を食べられるように舌で舐められて、俺の舌にも歯を立てて甘噛みしてきた。 「ふっ……あっ……あん……あああぁっ!!」  敏感になっている俺の体は、舌先を愛撫されるだけでも震えて、シオンに口を吸われただけで腰を揺らして達してしまった。 「可愛いね、ユーリ。シオンのキスでイったの?俺の目の前でさ……、ちょっと焼けちゃうな」 「うるさい、早く挿れてやれよ。どうせ譲らないんだろう」 「当然、俺が見つけた可愛い猫だからね」  ミランは俺の後ろに入れていた玩具を取り出した。それが抜けていく感覚は強烈で俺は理性をなくした獣のように声を上げた。 「ユーリのここ、雄を求めてヒクついているよ。ずいぶん柔らかくなったね。これなら俺が入っても大丈夫だ」  すでに興奮が高まっているのか、ミランは荒い息をしながら俺の足を持ち上げて、後孔に自分のぺニスをあてがった。入口は柔らかくとろけていたので、ミランは楽に入ってきたが、さすがに中は狭かったのか時間をかけながら押し広げるように腰を進めてきた。 「ぁ……ああ……くっ……くるし……、あつい……の……はやく……はやくきて……」 「う……、ちょっと待って……、さすがに狭いからさ……、はぁ……でも……すご……、ユーリの中、やばいね。気持ち良すぎ……うねうねして……全部飲み込まれそ……」  ぐっと突き入れられて、どうやら全部入ったらしい。ミランは息を吐いて汗を垂らしながら、やっと入ったよと満足そうに呟いた。 「ユーリ、こっちだ」  うめつくされる苦しさに息を吐いてごまかそうとしている俺の顔の前に、シオンは自分のぺニスを持ってきた。口許に当てられて、やっとその意味が分かった。おずおずと舌を這わせて口を開けると、シオンは喉の奥までぐっと突き入れてきた。  さすが双子だけあって、その形までそっくりだった。シオンのぺニスは半勃ち状態だったが、俺の口の中で硬度が増していき、すぐにガチガチになって口内をうめつくした。 「んっ……ふぅ…………んっ……」 「こら!入っているのは俺なのに!もう手加減しないからね」  シオンと見つめ合いながら、必死に怒張を頬張っていたら疎外感を感じたのか、ゆるゆると動いていたミランが、激しく突き動かし始めた。  パンパンと音をたてながら打たれて、シオンのモノをくちに含みながら声を漏らしてしまうと、口内のモノがぐんと質量が増したのを感じた。 「んっ……んんんっ……はっ……んっんっん……ぁん!!」 「ああっ……やば……締まり良すぎ……、ユーリ一回出すよ」  すでにどこを弄られても達してしまう敏感すぎる状態の俺は、ミランの激しい抽挿で、ぺニスを揺らしながら先からだらだらと液をこぼしていた。  詰めた声を出したミランは俺の奥まで腰を入れた後動きを止めて、ドクドクと熱いものを放った。 「ああっ……、お腹……おく……あ…つ………い……」  俺は無意識にミランの腰に自分の足を絡めて、それが抜けないようにぐいぐいと力を入れてしまった。 「ちょっ…………、エロすぎなんだけど、ユーリ……。ホントに童貞?素質ありすぎじゃない?あ……このまま二回目も…………」 「おい!次は俺だ」  次はシオンの番らしい、俺の口の中からぺニスを引き抜いた。 「……気持ち良かったよ。シオンもきっと好きになる」 「………………」  俺の中からズルリと自身を引き抜いたミランは、近づいてきたシオンと唇を重ねた。  舌を絡ませながらお互い顔を赤らめて唇を吸い合っている姿に、俺は気だるさを感じながらも唖然として言葉を失った。  二人は兄弟なのに、なぜキスをしているのか、挨拶程度のものではない。濃厚に舌を絡ませてミランは気持ち良さそうな声を出している。 「……シオン……愛している」 「……俺もだ……ミラン」  目を見開いている俺の存在など目に入らないように、そこには二人だけの世界があった。  ミランに二人には特別な繋がりがあって加わって欲しいと言われたことを思い出した。  なぜ自分はここにいるのか、ここにいていいのだろうか、疑問が湧いてきてうめつくしそうだったが、俺の中に残る熱がそれをぼやけさせた。  愛しそうに見つめ合う二人を見ながら、早くこの熱を溶かして欲しい、どちらでもいいからと口にできない思いを飲み込んで熱い息に変えたのだった。  □□□
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