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03,Unknown
「こんなの俺一人で充分だっつの」
「お嬢の命令だから仕方ないよ」
アルバートとガイア、二人で任務に派遣された。
単なるアンノーン討伐なのだが、魔法の相性がいい為この二人はコンビで派遣される事が多い。
「ニィハオ☆中国!」
「さっさと終わらせて帰ろうぜ」
「そうだね!」
中国・四川省の山奥でアンノーン反応を感知したとの事。
二人は足場の悪い山道を進んでいた。
「早く捕まえないと」
「もう、そこまで遠くねぇよ」
「え?」
「あと600フィートってとこか……」
「相変わらず感知能力すごいね」
ガイアは魔力などを感知する能力がギルド内でも一際良い。
魔力を持つものの魔道師と比べれば格段に低いアンノーンを見つけるのは至難の業。
ほとんどの者は魔具を使用する。
だが、その能力に優れているガイアはより先にアンノーンの魔力を見つける。
「ねぇ、この任務終わったら万里の長城行かない?」
「は?」
「せっかくチャイナに来たんだし!」
「ヤダ」
「何で?」
「めんどくせぇ」
「またガイアはそうやって……」
プクーっと子供のように膨れるアルをあっさり無視する。
「じゃあ中華料理食べよう!」
「ヤダ」
何を誘っても一点張りのガイアに表情が固まった。
「そもそも観光に来たんじゃないんだぞ」
「分かってる」
「厄介だよな、アンノーンって奴は」
「そうだね……」
アンノーンがいなければどれだけ平和だっただろうか。
いや、自分たちが、魔法がある限り平和にはならないのか。
光があるから闇がある。
アルバートはそんな事を考えながら俯く。
「にしても、まだ悪さしてないみたいで良かった」
「中国は人多いからな、何があるか分かんねぇぞ」
「うん」
アンノーンは死者の魂、いわば霊から成る悪霊。
人や動物を喰らったり、人間に乗り移る事も出来る。
神隠しなどは大体アンノーンの仕業。
ウ、ウォオオオッ!
「!!」
ちょうど、600フィート程進んだ先に、黒い影。
呻き声をあげながら猛スピードでこちらに突進してきた。
二人は左右に飛びそれを避ける。
「アンノーン……!」
「雑魚だ。さっさと片付けるぞ」
「あ、ああ」
「フレイムフェニックス!」
ガイアが炎で構成された巨大な鳥を繰り出し攻撃する。
それは見事に直撃し、アンノーンは炎に包まれた。
「ん?あれ?」
そのままアンノーン消滅。
「雑魚」
「ちょっと待って!俺何もしてない!」
「チンタラしてるからだろ」
「ガイアが本気出し過ぎなんだよ!いきなりフェニックス出しちゃいます?!あそこで!」
確かにフレイムフェニックスは一般的に大技。
並大抵の魔道師が使える魔法では無い。
「早く帰って寝たくてな」
「どんだけ睡眠に執着してるのさ!」
アルバートがどれだけ叱ってもガイアは欠伸をして眠そうにするだけ。
「もういいよ」と諦め、半べそをかきながら溜息をつく。
「……お嬢にまた怒られる」
「あ?何でお前が?」
「お前がどんくさいからだ!とか」
「実際そうだろ」
「ひどい!何か今日のガイア嫌い!」
任務内容は細かく報告しなければならない。
アルはどうも要領が悪く、今まで散々ベルーナに注意されてきた。
今回も結局何もせずに帰って来たのならばそれは彼女の説教の的となるのだ。
「お嬢怖いよ……」
「仕方ねぇな」
「誰のせい?」
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