思い出してはいけない話

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「和室に、女の人の幽霊、出てくるよね。お婆ちゃん、だっけ?」 「いや、若かったような。それで、赤ん坊を抱いてて……」 「あっ、そっか。泣き声が聞こえるんだよね、赤ちゃんの」 「違うよ。泣いてるのは女の人で、赤ん坊は、確か首が――」  そこまで言いかけたとき、 「思い出すな!」  と、男の叫び声が聞こえた。びっくりして俺たちは周りを見回したが、大声で騒いでいる酔っ払いは多いものの、声の主は分からない。  柳と顔を見合わせる。彼女は、ひどく怯えた表情で、 「今の、部長の声じゃなかった?」
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