星流れる時に

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「あ、流れた。今の見た?」 静寂を破ったのは私だった。 「――え、どこ?」 「見えなかったの?まあ、一瞬だったけど。あっちの右上の方。あの明るい星の近くだよ」 私がそう言ってその方角を指で差した瞬間、ちょうどその先に、今度は明るくて長い流れ星が流れた。 「あっ」 二人の声が重なった。 「見えたな」 「見えたね。結構長かったね」 「うん。でも、あっという間だったな……」 そうハルが言った後にまた短い沈黙があって、そして私はまた口を開いた。 「あの時も、無言だったよね」 ハルは視線を空に向けたまま答える。 「そうだな。なんでだろうな。本当に言いたいことがあると、何も言えなくなるものなのかもしれない」 「『どうして、ハルは何も言わなかったんだろう』って、こんなふうに流れ星を見ると、私はあの時のことを思い出して、考えてた」 私の言葉に、一呼吸置いてハルが続ける。 「俺も……なんで何も言わなかったのか、考えた。こうやって星を見るたびに。『どうして何も言わなかったのか。あの時どうするべきだったのか。ナミは何を考えていたのか』って。でも、あの時はどうしたらいいのか分からなかったし、今も、どうしたらよかったのかは分からない。ただ、流れ星に願っても、自分が行動しなきゃ願いは叶わないんだっていうことは、よく分かったよ」 そういって、ハルは大きく息を吐いた。自分に呆れるような、すっきりしたような、何とも言えない感じの溜め息だった。
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