星流れる時に

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「ねぇ、覚えてる?」 「うん、覚えてるよ」 「――え」 すかさず返ってきた返答に、私は反射的に、少し距離を置いて隣に寝そべるハルの方に顔を向けた。彼からの答えがあまりにもすぐあったことに驚いたのと同時に、自分の口からその質問が飛び出していたことにも驚いた。彼のいる方向を見たところで、この暗闇の中では彼の顔も表情も全く分からない。 「『覚えてるよ』って、何を?」 私の問いかけに、彼の周りの草が揺れたわずかな音がして、上半身を肘で支えながら少しだけ体を起こした彼の影が、私の視界に浮かび上がった。 「何をって、流れ星だろ? こうやって、同じように見た。その時のこと」 100パーセントの確信を持っているように、はっきりとハルは言った。その言葉で、私の胸には嬉しさに後悔が少し混ざったような、生ぬるい感情が押し寄せた。 「そうなんだ……。覚えてたんだね」 「それはそうだよ」 ハルはそう言って上を向くと、今度は少し小さい独り言のような声で、 「そっか……。ナミも覚えてたんだな」 と呟いた。  それから暫くの間、私は何も言わなかった。ハルも何も言わなかった。周りの草や木々が風に揺れてこすれる音とバックグラウンドミュージックのように抑揚無く続く虫の声だけを聞きながら、私と彼はただ無数の星が浮かぶ夜空を見上げていた。
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