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満は「今夜は泊らないで帰る」と言い始めた。
「別に良いけど」ミチロウは何か押し殺しているのを彼自身感じた。
「じゃあ帰るは」
「それではおやすみ」ミチロウは満を送り出してから女のことを思い出していた。
「美穂子か」
十代の頃の女友達だったが、恋人とは呼べなかった。
「あいつ今頃何しているんだろうな」そんな独り言をつぶやいた。
八王子市内にあった長房団地は今はなかったが、あそこの跡地はどうなるのだろうか。
あそこに住んでいた美穂子は今どこにいるのだろうか。
美穂子との仲を十代の頃考えていた。
彼女は結婚したらしかったといううわさを耳にした。どこで聞いたのか忘れてしまった。
もしかして恋だったのだろうかなどと考えることはしなかった。
ほかにも仲の良い女はいたが美穂子は不思議だった。
彼女以外の女とは一緒に暮らしたことはあった。でも美穂子とは十代の男女の付き合いの仲だったなと心の中で思い浮かべてた。
これまでの出会いたちが走馬灯のようによみがえった。
ミチロウはその出会いのすべてに別れを告げた。
「さようなら」
ミチロウはそう一人でつぶやいた。
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