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「目下の悩みが食事だけだなんて、飛田さんが羨ましいよ。
私なんてこのままじゃ、いつアパート追い出されるか……」
条件のあうところに片っ端から当たっているが、面接までこぎ着けられたところはひとつもない。
貯蓄も大してなく、いつまでやっていけるか。
「……はぁーっ」
ため息がハモり、思わず顔を見あわせる。
レンズ越しに飛田と目があい、おかしくて笑っていた。
「イチコの悩みと俺の悩みがいっぺんに解決する方法があれば……」
そこまで言って飛田は宙を見たまま固まっている。
「……あった」
私の顔を再び見て、飛田がこれ以上ないほどいい顔で笑った。
「イチコは仕事が見つからなくて、できるだけお金を節約したんだよな?」
うんうんと黙って頷く。
「俺は食事を作ってくれて、できれば掃除や洗濯もしてくれる人が欲しい」
ならば、その答えは?
もうなんか、薄々わかっているけれど。
「イチコが俺と結婚すればいい」
「……は?」
でも飛田が出した答えは私の予想の斜め上をいっていて、思わず変な声が出た。
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