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「……ちょ、っと不健全すぎない? ただれてる。ただれてるよ、有ちゃん」
「ははは、向ちゃんを前に健全な精神が保てるかっての」
いつかのように言い返すと、向希も呆れて、でもちょっと嬉しそうに笑った。
「カフェ、明日だな。今日はどうする? 」
「無理。もう、一歩も動けない」
「あー。なんか、ごめん。んじゃ、適当に何か作るし、あ、フルーツ食べちゃおっか」
向希はささっとフルーツを乗せたトレーを運んできた。
「多いな? お腹空いてるけどそれでも多いな」
「はは。でも明日帰るから冷蔵庫空にしなきゃ」
私たちはだらだらして、結局家から一歩も出ないで、ただれた1日を過ごした。いや、正確にはだらだらしてたのは私だけで、向希はせっせと洗い物したり掃除したり、父と連絡を取ったりしてた。
「父さんに明日の帰る時間連絡しといた。カフェでランチして帰るから、夕方でいいよね」
「うん。ありがと。あー、帰りたくないな」
口に出すと、向希はくすりと笑った。
「素直じゃん」
「え、まあ」
「ちゃんと明日からは距離感保ってね、有ちゃん」
「わかった。じゃあ、今はいいよね」
私はベッドに寝ころんだまま両手を広げた。向希が直ぐに応えてくれる。
「あー、ヤバいね、これ」
「素肌で抱き合うの気持ちいいんだもん」
このまま寝たいなーって思っていたのに
「有ちゃん、歯は磨こう」
と向希は直ぐに素に戻る。こういうとこだぞ、向希。
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