夏の夜の夢

29/35
656人が本棚に入れています
本棚に追加
/214ページ
「……ちょ、っと不健全すぎない? ただれてる。ただれてるよ、有ちゃん」 「ははは、向ちゃんを前に健全な精神が保てるかっての」  いつかのように言い返すと、向希も呆れて、でもちょっと嬉しそうに笑った。 「カフェ、明日だな。今日はどうする? 」 「無理。もう、一歩も動けない」 「あー。なんか、ごめん。んじゃ、適当に何か作るし、あ、フルーツ食べちゃおっか」  向希はささっとフルーツを乗せたトレーを運んできた。 「多いな? お腹空いてるけどそれでも多いな」 「はは。でも明日帰るから冷蔵庫空にしなきゃ」  私たちはだらだらして、結局家から一歩も出ないで、1日を過ごした。いや、正確にはだらだらしてたのは私だけで、向希はせっせと洗い物したり掃除したり、父と連絡を取ったりしてた。 「父さんに明日の帰る時間連絡しといた。カフェでランチして帰るから、夕方でいいよね」 「うん。ありがと。あー、帰りたくないな」  口に出すと、向希はくすりと笑った。 「素直じゃん」 「え、まあ」 「ちゃんと明日からは距離感保ってね、有ちゃん」 「わかった。じゃあ、今はいいよね」  私はベッドに寝ころんだまま両手を広げた。向希が直ぐに応えてくれる。 「あー、ヤバいね、これ」 「素肌で抱き合うの気持ちいいんだもん」  このまま寝たいなーって思っていたのに 「有ちゃん、歯は磨こう」  と向希は直ぐに素に戻る。こういうとこだぞ、向希。  
/214ページ

最初のコメントを投稿しよう!