二度目の庄司

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 向希はすらり手足が長く、綺麗な奥二重の大きな目に、濃すぎない形のいい眉。横から見ると一層わかる、すっとした鼻筋。加えて感情の起伏が少ない、メンタルの安定した優しさを持ち合わせていた。おまけに陶器のような白いお肌は荒れ知らず。油分と水分のバランスさえいいのだろう。  あーあ、あいつがもっと不細工だったらみんな放っておいてくれたかもしれないのに。  不幸にも、向希は完璧な男だった。私と向希は中学に上がる前、再び兄妹になったのだが、兄妹ではなかったのだ。それは他人には知られてはいけない事実だった。  向希と同じ中学に通うようになって、さらによりにもよって、同じクラスになった。  中学の入学式だってのに両親は揃って出席し、当然向希も一緒。目撃者多数。出席番号に並んだ席順は前後。『向希』『有希』という兄妹丸出しの名前。同じ学年で双子でなく年子ってことも珍しかったのだとは思う。案の定、そういう品のないからかわれ方もした。『兄妹で同じ学年って』と、ニヤニヤ。小さい頃はこの意味がわからなかったが、思春期になるとまあまあ恥ずかしかった。  だけど、年子だとからかわれようが、血が繋がってない兄妹なのに一緒に住んでんだってニヤニヤされるよりはマシだと思っていたから我慢してまで隠した。それが甘かった。向希が非常に目立つタイプだったせいで、あっという間に兄妹だと知れ渡り、私はそれがマイナスに運ぶなんて思いもしなかった。
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