少女の探しもの

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僕は驚いて傘を落とし、ユキに近付いた。よく見ると、光を放っていたのはユキ自身ではなく、ユキのワンピースのポケットから光が漏れていた。カオリがそのポケットから光の正体を取り出した。 「…ストップウォッチ?」 デジタル式のストップウォッチに見えるそれは、0を表示させたまま強い光を放っていた。 “時間です。時間です。” ストップウォッチから機械的な声が聞こえ出し、カオリはそれを僕に渡した。 「…何だろ、これ。」 僕が何気なくストップウォッチの裏面を見ると、“2043”と小さく刻まれていた。 「何だろ、年号みたいだな。22年後?」 次の瞬間、僕の手からストップウォッチが姿を消した。 「え!?」 驚いてカオリに目を向けると、カオリは地面に尻もちをついて、目を見開いていた。僕は慌ててカオリに駆け寄った。 「カオリ!?」 「…たっくん、消えちゃった。」 「え?」 「一瞬で…女の子…。」 僕は慌てて周りを見回したが、ユキの姿は確かに何処にも見当たらなかった。 僕は気持ちを一旦落ち着かせ、傘を拾うとカオリの真上に差し、手を差し伸べた。カオリは僕の手を掴み、ゆっくりと立ち上がった。 相合い傘のまま、カオリは落ち着かない様子で僕に語りかけた。 「たっくん。さ、さっきの子ってやっぱり幽霊なの?」 僕はさっきまでユキがいた場所を見つめながら首を横に振った。 「多分、あの子は…ユキは、僕たちの子どもなのかもしれない。」 僕の言葉に、カオリは顔をしかめた。 「わからないよ、僕にも本当のとこは。でも、あのストップウォッチみたいなのがタイムマシンだとしたら…なんて考えてみたんだ。そしたら、何か僕の気持ちがしっくり来てさ。」 「…タイムマシン。丁度、私が今大学院でやってる研究テーマだわ。…信じないわけにはいかないかもね、その仮説。」 カオリは一度目を閉じてから僕に向かって微笑んだ。僕も微笑んでカオリの手を握った。 僕は地面にひっくり返ったままの自分の傘を拾うと、そのまま畳み、相合い傘のまま歩き出した。 「…そういえば、カオリはここに何しに来たの?」 「今度ね、このタワーのそばにうちの大学の附属小学校が出来る計画があるって小耳に挟んだから、どこかなぁって見に来たのよ。」 「…そっか。」 僕は何だか嬉しくなって、傘を退けて空を眺めた。 「…たっくん、どうしたの?濡れちゃうよ。」 「未来って、なんか空の先にありそうじゃん。」 「フフッ、なるほどね。…研究がんばろーっと!」 僕たちは未来に向かってまた一歩踏み出した。 ー 完 ー
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