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「でさぁ、聞きたかったんだけどぉ」 「なんですかぁ」 「他人(ひと)の抜くのってさぁ、どんな気持ちなわけぇ?」 どん、とお猪口をテーブルに置いて、理永(りえい)(とおる)に詰め寄った。享は目が据わっている。すぐ近くにある理永の顔にも怯まず、享は答えた。 「どんな気持ちって・・・好きな人が勃ってるの目の前にして、普通なわけないじゃないですかぁ」 「気持ち悪くねえのぉ」 「気持ち悪くなんかないいぃ」 「そもそも俺の何がいいんだよ」 「言ったじゃないですかぁ、優しいってぇ」 「優しい、優しいって、女子かお前」 「え~、じゃあ、本心言いますよぉ」 「おお、言え言え」 「ずっと思ってたことがあってぇ」 「おう」 「めっちゃエロいなあって」 「お・・・おお」 「この人とどうにかなりたいなあって、夢みたいなこと思っててえ・・・」 「そんなにエロいかなあ、俺」 「・・・自覚ないんですかぁ」 「なくはないけどさぁ、どのへんが?」 「えっとぉ、鎖骨のあたりとかあ、腰回りとかあ・・・いろいろぉ」 「どエロい目で見てたんじゃねえか」 「そうですよっ・・・抱かせてもらいたいなあって・・・思っててえ・・・」 「・・・タチなん?」 「っていうかぁ、そっちしか経験がないんですぅ」 「あ~、な~るほどお」 「つばきさ・・・・理永さんはどうなんですか」 「おい、さんづけやめろや」 「だってえ」 「だってもクソもあるかっ」 「照れますう」 「人のち○こ扱いといて今更照れんなやっ」 「・・・・・・うぅうっ・・・」 「キスもしただろーがっ」 「あ、あれは、そのぉ、勢いでぇ・・・」 「下手くそなキスしやがって・・・歯当たっただろーがよ」 「ごごごごめんなさいっ」 理永の手がぐん、と伸びて享の顎を掴んだ。あっという間に享の唇は理永に食べられた。 熱い舌が享の口の中でうごめく。 しばらくして、ぷはあ、と息を吐いて理永が離れた。 「りえいさ・・・」 「キスってのはぁ、こうやるわけ。わかった?・・・・・ぉわっ」 享は理永の顔を掴むと、その唇にむしゃぶりついた。唇をはむはむと甘噛みし、舌を絡ませて、享は思う存分理永を味わった。ずいずいと身体を寄せ、太股と太股がぶつかる。理永が苦しそうに享の肩を押し返そうとするが、全く効果がない。 「・・・我慢、してたのに・・・」 唇を離し、享は潤んだ瞳で理永を見つめて呟いた。そして続けた。 「煽ったのが悪いんですからね」 「え・・・」 享はもう一度理永の唇を覆って、背中に手を回した。やっぱり不慣れな手つきで理永のシャツの中に手を差し入れ、素肌に直接触れて、下から上に撫で上げた。 理永は背中をしならせ、塞がれた口で唸った。 「・・・んっ・・・おいっ・・・」 理永の声に享の動きが止まった。 「おっぱじめる気じゃねえだろうな?」 「・・・だって」 「キスくらいで盛んなよ」 「キ・・・キス、もう一回練習させてください」 「・・・マジで?」 「マジです、お願いします」 酔っているから、という理由だけが武器だった。必死に食らいつく享、絆されかかっている理永。享はいつのまにか理永の首筋に手を添えていた。 「なんだよ・・・それ・・・」 唇と唇との距離はほんの数センチ。享は空いた手で理永の腰を引き寄せた。もう後がない、と思った理永は諦めて身体の力を抜いた。 (・・・あれ・・・?) 何が吹っ切れたのか、亨は遠慮なく舌を絡ませてくる。腰に回した手は力強い。 「・・・んぅ・・・う・・・」 どうしたものか、足下からぞわぞわと快感が上がってきて、理永は声を抑えられなかった。再び足と足が触れ合い、享に処理をしてもらった時の感覚が想い起こされる。 (急に本気出しやがって・・・なんだこいつっ・・・) 腰に添えられた手が理永のシャツをぐっとたくし上げた。背中が半分むき出しになった瞬間、理永は強い力で享を引き剥がした。 「・・・おいっ!」 享は押されて座敷の畳の上に手をついた。理永は今までと打って変わって、苛ついた顔で享を睨みつけた。驚いた享は瞬きを繰り返した。 「えっ・・・」 「・・・調子にのんな」
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