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体中の痒い感覚は消えない。
身を捩ろうにも上手く動かせず、すぐに諦めてしまった。手足を縛り付ける縄はきつく肌を締めている。真っ白なワンピースの上には見たことのない種類の虫が数十匹以上止まっていたが、もう驚くことはなかった。
正確には驚く体力がなかった。
得体の知れない蛾、多足で細長い虫、顔の周りを飛び回る蠅や蜂は群れを成して、その羽音を耳の近くで鳴らす。数時間前まではその不快感に絶叫していたが、既に慣れてしまっていた。
頬の上で蛾がぴたりと止まる。
手の甲に蠅が数匹止まる。
体中に数十匹の虫が止まる。
顔の表面を流れる汗の感覚と虫の感覚が混ざり合い、湿気に満ちた狭い部屋の真ん中で椅子に縛られたまま、自分の口から涎がぼたぼたと垂れていく感覚に溺れていた。
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