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眩しい朝だった。 目を見張るような青空に、誰かが何の気なしに落としてしまったような雲。少しばかりの風が吹いて涼しさが肌を掠める。逃げ出すこともなく直樹は地上に上がると、畦道の上を歩いて行った。 両手に繋がれた革のベルトからは1本の縄が伸び、林圭子はそれを掴んで直樹の前を歩く。村役場へ向かう最中、左右に広がる田畑からは歓喜の声が飛んでいた。全員が直樹に黄色い声を飛ばし、その中には彼の様子を見て泣き崩れる者もいた。 「あれは…?」 ふと遠くに向けた視線の先、白いタイル貼りの村役場の前で大勢の男たちが木々に鉄パイプを担いで、何か作業を行っている。林は落ち着いた様子で前を歩きながら言った。 「あれが儀式の舞台となります。直樹様はあちらの祭壇の上で、儀式に入っていただきます。夜の11時半から儀式は始まりますので、それまでは別室で待機となります。」 野山を駆ける動物よりも遅いスピードで2人は村役場に辿り着いた。正面玄関に入るまで、作業を中断した男たちからの盛大な拍手を横から浴びていた直樹は、不思議といい気分だった。 白い廊下を左に曲がって一番奥へ進む。左手の扉が開かれ、直樹は再び豪勢な部屋に戻った。しかし数日間も生温い地下空間にいたためか、彼はご褒美を貰ったような感覚に陥っていた。千鳥足の状態で両手を縛られたまま真っ直ぐにベッドへと向かう。 「それではまた伺いますので。」 頭を下げて林圭子は扉を閉める。ガチャリと施錠される音を聞き、直樹は鉛で殴られたような眠気に身を任せた。
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