愛してた、別れよう

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「じゃあ、何のために俺は.....」 取り返しのつかない絶望に陥った蒼ざめた顔で俯くと、突然顔を上げて終夜に詰め寄った。 「端から蓮が目的だったんだろ?.....知ってて、俺にあんなこと!」 「ちょっ、やめろよ!」 「すまなかった」 終夜の胸ぐらを掴みながら揺さぶる手を止めようとするが、遊馬の声はヒートアップして行く一方だ。いつも飄々としている遊馬の初めて見せる姿に、何が何だか分からなくなる。そして終夜の方も、酸いも甘いも噛み分けたような顔つきで、謝罪の言葉を口にするだけだった。 「お前を信じてた!なのにっ!お前は!!」 「すまない」 「蓮を愛してたから、だから.....っ!」 俺が何年も彼に言われたかった言葉を、終夜の目を見て告げる。 そのとき俺も気付かされた。愛してると、俺の口から遊馬に伝えたことがあっただろうか。遊馬から告げられるのを待つばかりで、俺から伝えたことは一度もなかったでは無いだろうか。 「俺が蓮を諦められなかった故の一言のせいで、お前達2人が長年苦しみ合っていたのは知っている。本当にすまない」 「じゃあっ、俺に蓮を返してくれよっ.....」 尻すぼみになる遊馬の声と共に、終夜を掴んでいた手を解いた。 崩れ落ちるように、その場にしゃがみこむ。 「すまない。それは無理だ。蓮を手放すことだけはできない」 そう告げると、俺の腕を掴み踵を返して車へと進もうとする。 突然引っ張られてバランスを崩しかけたとき、俺のズボンの裾を掴む手に気づいた。顔を膝に埋めたまま弱々しく掴む手に、お互い歩みよっていたら結果は変わっていたのかもしれないと今更ながら思った。 (愛してる、その言葉をもう少し早く聞けてたら。そして、俺も愛してると伝えていたら) 「どうしようもないほど、遊馬を愛してたよ」 遊馬の顔は見なかった。そして遊馬も顔を上げなかった。俺たちは最後まで、臆病者同士だった。 おわり ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 「 その蓮って奴、遊馬のチャラい部分を見て好きになったんだろ? __お前の気持ち知られたら、重いって捨てられるかもな 」 他サイド視点も筆が乗ったら投稿しようかなと考えています。
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