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2.
椎尾は赤い顔をしてふらふらと軽井沢の林の道を歩いていた。
知人とのバーベキューが終わり、今晩泊まるコテージに戻るところなのだ。
夏といえども軽井沢の夜の風は冷たい。ポケットをまさぐりコテージの鍵が見つかったころには高価な酒は少し抜けていた。
「ガチャ」
鍵を開ける音に交じって誰かの声が聞こえた気がする。
椎尾が辺りを見回すと背後に腕を組んで立っている男がいた。
「椎尾さん、ドンペリはおいしかったですか?」
デイバッグを背負い帽子を深めにかぶったその男に椎尾は心当たりがあった。
ついこの間まで会社の共同経営者だった出渕である。
彼はゆっくりと椎尾に近づいていった。
「お、お前、どうしてここに・・・?」
「パーティーをやってると聞いたもので、
ちょっと見に来ちゃいました」
「・・・」
椎尾はコテージのドアに手をかけたまま固まっていた。
「一体何のパーティーだったんです?」
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