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Act.06:気になる噂②
「そーれ」
ドーン。
放たれた星は容赦なく魔物を蹂躙する。脅威度Cの魔物が三体出現し、まだ魔法少女も来てなかったので倒している感じだ。
「本当に恐ろしいわね、あなた……」
「それ程でもない」
他と比べて出現する魔物は少ないとは言え、県北でもやはり出現はする。今回は脅威度Cと低い魔物だったが、三体居たし。
「え、また?」
三体とも葬った後、またすぐにデバイス……今はステッキだが、警報が鳴る。つまり、近くにまた魔物が出現したという事だ。
やっぱり増えてる、よな。とにかく、魔物のいる場所へと向かうが、既に魔法省の魔法少女が駆け付けていたので出番は無さそうだ。
「あの子、強いわね」
「ん?」
今度出現したのは脅威度Bの魔物二体だが、それを一人でいとも容易く相手している少女を見てラビが呟く。
「あれはホワイトリリー」
「ホワイトリリー……あれ、聞いたこと有るような」
「ん。この地域最強のSクラスの魔法少女」
魔法少女ホワイトリリー。
名前の通り、白百合がモチーフな衣装を身にまとう、Sクラスの魔法少女だ。茨城県所属の、最高戦力である。
「あー」
そういう事もあり、良くテレビやSNSでも話題に上がる。この辺りの人ならまず知らない人は居ないだろう。
主な魔法はステッキから白百合の花弁を放つ遠距離攻撃魔法。俺の星を飛ばすっていうのとちょっと似てる感じ。
それだけではなく、飛ばした花弁を操ることも出来るし、複数召喚することも出来る。
「行こう」
「そうね」
丁度魔物を討伐し終えたホワイトリリーを見て、その場を静かに去る。しかし、その時彼女がこちらを向いていたという事は俺が知る由もなかった。
「……あの子が噂の星月の魔法少女ですか」
彼女が居たであろう場所を見ながら呟きます。
如何にも魔女っ娘と言った可愛らしい衣装でしたが、恐らく実力はかなりのものです。
この距離からも伝わってくる程の、魔力の圧……あの身体にはかなりの魔力を保有しているのは間違いないですね。
「……ちょっとお話してみたかったですね」
見た感じでは、私とそう変わらないくらいの年齢だと思いますが、変身後の姿は元の姿と大きく変わるので断言は出来ませんが。
魔法省内でも噂が絶えない、星月の魔法少女。その正体は謎で、名前も不明。そして野良で戦っているという。
分かっているのはステッキから星を飛ばすと言う魔法と、重力を操作できる魔法が使えるという事くらいです。
ステッキから星を飛ばすって言葉だけ見ると、意味わかりませんよね? いえそれを言ったら、私の魔法もステッキから花弁を飛ばすという物ですけどね……。
野良ではありますが、県北に良く出没するらしいです。
偶に県南や県央等でも目撃されることもあるみたいですが……少なくとも、魔物を倒してくれている点では味方と思って大丈夫だと思いたいです。
とにかく、この子は茨城県に居るという事だけは確かかなと思いますね。
純粋な強さとしては、脅威度Aの魔物を大体一撃で倒しているのが、結構目撃されているみたいです。
つまりそれは少なくともAクラス、Sクラス以上の力があると見て良いと思います。
「何で野良で戦ってるんでしょうか?」
考えても分かりませんね。
私は倒した魔物の魔石を回収し、もう一度あの魔法少女が居た場所を見てから、その場を去るのでした。
「今日倒した魔物は六体か。……やっぱり多いな」
これ以外にも、魔法省の魔法少女が倒した魔物もそれなりに居る。そのうち、倒したのが四体だ。
俺は自宅に帰り、今日倒した魔物について考えていた。
「脅威度Dが一体、Cが三体、Bが一体それから、Aも一体ね」
「ニュースとかで本日発表された魔物の数は全部でおおよそ50体。ほとんどがDかCばっかみたいだがな……」
魔物の強さ自体は問題無いが、やはりいきなりここまで増えるのは謎ではある。県南が10体、県西が15体、県北が5体、県央が20体というとの事。
「相変わらず県北は少ないのね」
「だな。つい最近まででは0ばっかだったんだが。これってさ、俺が原因とかあり得るか?」
「うーん……無いとは言い切れないわね。前にも言った通り、あなたの魔力は異常だから」
「そうか……」
魔物は魔力に惹かれる習性を持つ。
大きな魔力を持つ者ほど、魔物を惹きつけやすくなる。そして俺の魔力は異常らしいので、可能性とは0ではないとの事。
だから多くの人が集まる場所ほど、狙われやすい。だが俺は単体で異常な魔力を持つ……何人分かは分からないが、茨城という地域全体での魔力量が増えたから現れ始めたという可能性がある。
県央には茨城の県庁所在地である水戸市がある。あそこはそれもあって人が多く集まる場所……だから魔物出現数も多めだ。
ここ一週間で茨城全土の出現数は上がりつつある。まだ一応落ち着いていると言うレベルではあるものの、増えてるのは紛れもない事実。
現状茨城県に属する魔法少女は30人程だ。対する魔物は50体前後……まあ、人手不足ではあるよなあ。
何とかなってるのはやはりSクラス魔法少女のホワイトリリーの存在が強いのかも知れない。
この地域にはSクラスのホワイトリリーを筆頭に、AクラスとBクラス、Cクラスの魔法少女が居る。
「いくらSクラスがいるとは言え、人手不足すぎやしないか」
「人手不足っていうのは何処の都道府県にも言えることよ。東京都だって100人以上は居るけど、魔物の数も多いし」
「まあそうだよなー」
首都とは言え、やはり魔法少女は不足しているのだ。
覚醒したからと言って戦う義務もないので、誰もがなるというものでもない。本人の意志が尊重されるから。
「まあ、この地域はあなたが居るからもしかすると、首都より安全かもしれないわね」
「それはちょっと言いすぎだろ」
いくら俺がラビの言うように強いと言っても、限度はありそうだ。脅威度Aなら確かに相手できるが、魔物にはまだ脅威度AAやS、SSもある。
近年では滅多に確認されてないが……最近だと3年前に脅威度Sの魔物が出たきりだな。
世界全体で見ても、やはり数年前に出現したきりで、今は最高でもAまでしか確認されてない。
脅威度AAはまだしも、Sの魔物は強い。Sクラスの魔法少女複数で相手をするレベルだ。この辺りになるとSSクラスの魔法少女も出始める。
で、その上を行く最高脅威度であるSSの魔物は災害級。
SクラスやSSクラスの魔法少女が出ても倒せるかは怪しい。そういったやばい魔物が出た場合はLクラスの魔法少女が出動する。
Lクラス……並外れた力を持つ魔法少女で簡単に言えば世界最強の魔法少女たちだ。確認されているのはたったの7人。そしてこれは世界全体で見た場合の人数。
原初の魔法少女に匹敵する。一人で国を滅ぼせるとも言われてるけど、詳しいことは分からん。
あまり表にも出ないしな……ただ魔物を倒しているのは確かだと魔法省は言ってるが。
そんなLクラスの魔法少女なら脅威度SSの魔物にも対抗は出来るだろう。まあ、脅威度SSの魔物が出たのは全てが始まった魔物出現の日、今から15年前の西暦2005年の3月20日のみだが。
幸い、出現したのは別の国だったがそれでも現れた国は半壊にまで追いやられたという。原初の魔法少女たちが倒したからそれ以上の被害はなかった。
その日から各地でも魔物が出現し始めたのである。それと同時に魔法少女なる存在も誕生したのだ。
Lクラスが一番強いのだが、そんな理由もあり、SクラスやSSクラスの魔法少女の方が話題に出やすいのだ。というより出まくる。
そして俺みたいな野良で戦う魔法少女も結構話題になりやすい。とはいえ、知る限りじゃ俺くらいしか居ないかも知れないな……。
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