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Act.07:ショッピングモールのTS魔法少女①
「良い感じね」
「ん。魔法凄い」
魔力を抑えた状態、限りなく普通の人間に近い状態の魔法少女の姿での話である。いい加減、何か良い名前が無いものか?
省エネモードだと、何処かの家電みたいじゃないか。
「服の参考がMMORPGって言うのがあれね……」
「それくらいしかない、仕方ない」
で、何をしてるのかと言えばこの状態の服装を変えていた。この白いワンピースは魔力で出来ていると言ったと思う。
そして魔法少女は魔力を纏って姿を変える。要は、この状態でもこれは当てはまるのだ。
女の子の服には詳しくないので、全部MMORPGのアバターを参考にしてる。試してみた感じでは問題なく服が変えられる。
取り合えず学生風なスタイルだったり、セーラー服だったり、巫女服だったり……アバターは豊富なんだが、実際着るのは凄い変な感じしかない。
それに俺は男だ。リュネール・エトワールには似合ってるが、中身が俺であるため、何とも言えない気分になる。
まあこれもイメージや魔力コントロールの練習だと思えば良いか。
あとは、仮にであるが何度も変身前(偽)の姿を見せる必要があった場合とか、ずっと同じ服ばっか着てる訳にもいかない。
念には念を入れよ、とは良く言ったものだ。
しかし、ゲームのアバターを参考にするのは良いが、普通に着る物としてはあまり実用的じゃない気はする。と言うか、こんな格好で歩いたら恥ずかしいだろ。
一番無難なのがブラウスにスカートの、如何にも女学生っぽいアバターくらいだ。そんな訳で今その制服スタイルで居るんだけど……。
「アバター頼みじゃ駄目っぽい?」
「まあ、ゲームのアバターだからね……ゲーム内なら良いけど、実際着るのは確かにあれかもしれないわね」
PCのブラウザで某有名な通販サイトを開く。
イメージできれば良いのなら、商品を見れば行けるかなと思った感じ。でも、服に俺が詳しいはずもなく……。
「良く分からない」
「もうこういうのは、コーデとか載せてるブログを見るのが一番じゃないかしらね」
「確かに」
ラビと話しつつ、何か良い感じのサイトを覗く。
「これとか良さそうじゃない?」
それは白いTシャツの上から黒のパーカーを着て、下は黒のジーンズにグレーのスニーカー。そして黒いバックパックなスタイルのコーデだった。
全体的にストイックな印象を与える。黒を基本としてるから俺としても、問題なさそうな感じ。
「やってみる」
早速、これをイメージする。目を瞑り、精神を集中させる。良い感じにイメージが固まったらそれを魔力へと流し込む感じだ。
すると、今着ている服が光り形を変えていく。
「成功ね」
「やった」
素直に喜ぶ。
記事に載ってる物そのものではなく、ちょっとだけ俺の趣味が混じってるが問題ない。このスタイルなら良いかもしれんな……。
その後も俺は、イメージや魔力コントロールの練習を続けるのだった。
□□□□□□□□□□
「それで、どうしてこうなった」
「良いじゃない!」
所変わって俺は今、近くのショッピングモールにやって来ていた。ただショッピングモールに来るだけなら何の問題も無いが、今回は問題があった。
それはリュネール・エトワールの姿で来ているという事。省エネモード……いや、もう決めてしまおう。この状態の事はハーフモードと命名しよう。
半分魔法少女、半分普通の少女と言う事でハーフモード……安直だって? シンプルイズベストだよ。
てな訳でそんなハーフモードでやって来ているのだ。
この姿ではさすがに車は使えないので、最寄り駅から電車に乗って県北から県央へとやって来た。
そして今の格好は黒いパーカーのあれだ。
それで何でこの姿でわざわざ人の多い場所に来たのか……ラビのせいである。ハーフモードで人前に出る事に慣れろとか言う無茶ぶりを言い出してきよった。
肝心な時に話せなかったり、緊張したり、恥ずかしがってしまったりすると挙動不審で変な目を向けられてしまうので、前もって慣れろと。
因みに銀色の髪と言うのは非常に目立つので、ハーフモードでの髪色は黒としてる。長さは同じでロングな感じ。
「はあ」
ラビはと言うと、兎のぬいぐるみとなってバックパックの中に居る。ラビの姿が見えないって事は無く、普通に他の人に見える。
なので、ラビの身体がぬいぐるみっぽいのでぬいぐるみとして扱えば不審がられないだろう。
「でも久しぶりに来た」
結構長い事来てなかったけど、お客は多い。流石は有名なショッピングモールである。
エスカレーターを使って一階から二階へ、そしてまた乗って二階から三階へ。無難に本屋さんにでも行くかと思い、三階にある書店へ向かってる最中だ。
こういう所の書店って大体三階にあるよねー……。
「ここ広いわね」
「ん。昔増設されたこともあって多分県内では一番大きい」
増設って言うのもあって、県内じゃ一番大きい所だと思う。どうでも良いけど立体駐車場は俺は好きじゃない……今回は電車だがな。
「あった」
目的の書店に辿り着いたので、早速中へ。ライトノベルやら漫画やら、参考書やら色々とあるが、俺が向かったのは漫画エリア。
これでもアニメとかライトノベルとかも読む方だと思ってる。見渡す限り、立ち読みしてる人はそこそこ居るな。
適当に気になった漫画を手に取り、中を開いてみる。こんな姿だけど、こういう日常って言うのも良いよな。
平穏が一番……魔物もいつ居なくなることやら。今もどこかで魔物は出現してるんだろうなあ……。
そんな事を思ってると、俺の変身デバイスも警報を鳴らし始めた。あれ、俺何処かでフラグ建てた……?
館内にもアラームが鳴り響く。これは魔物の出現や接近を知らせる警報だ。色んな場所に設置され、避難誘導を行う感じだ。
「司!」
「ん、分かってる」
モール内の人々が小走りやら走りやらで、避難していくのを見つつ近くの場所に隠れる。
抑えている魔力を開放し、体全体に回すようにすればたちまち俺の姿は魔法少女リュネール・エトワールとなる。
変身キーワードを使う必要がないので、変身する手間が省ける点ではこのハーフモードは良いのかもしれない。
姿を見えないようにした後、素早くショッピングモールの外へ出る。大きく飛び上がり、屋上へ着地し魔物を見やる。
距離はまだ離れているがこちらに侵攻中。でかいカタツムリのような魔物だな。
「あれは……」
「既に一人魔法少女が駆け付けてるわね。あら、あれはホワイトリリーじゃない?」
「うん、多分そう」
以前に見た事のある衣装を纏ったSクラスの魔法少女ホワイトリリーがそのカタツムリな魔物を食い止めていた。
「これならわたし必要ない?」
「かもしれないわね……でも一応様子を見ときましょ」
相変わらず、Sクラスって事だけあって動きも俊敏だ。真っ白な白百合の花弁を召喚して放ったり、放った花弁から伸びた線がホワイトリリーまで伸びていて、それを持って動かすと、放った花弁も動きを変える。
「ハンマー投げみたいね」
「うん」
実戦経験の数も違うのだろう。
流石と言った感じだけど、カタツムリの魔物は自分の殻に身体をひっこめたっぽい。
「効いてない?」
「ええ多分……あいつの殻は相当硬そうね」
「推定脅威度は?」
「うーん、本体自体はBくらいだと思うけど、Sクラスの魔法少女の攻撃を防いでるあの殻は厄介ね。硬さだけならSあるんじゃないかしら」
今度は魔物はスピン攻撃みたいなの繰り出す。ホワイトリリーも慌てて避ける。何度か攻撃してるみたいだけど、殻には傷一つない。
「加勢した方が良いかな」
「あのままじゃジリ貧になりそうね」
それならまあ、加勢するとしようか。
俺は再び高く飛び上がり、ホワイトリリーとカタツムリの魔物が居る場所へと向かうのだった。
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