プロローグ

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ぷろろーぐ! 「魔法少女にならない?」 「はい?」  宝くじで1億円を当てて今やニート生活を謳歌している俺こと如月司(きさらぎつかさ)は喋るぬいぐるみにそんな事を言われていた。  いや、魔法少女ってなんだよ。俺男だし、少女じゃないんだが? 「いや、俺男なんだけど」 「そんな事知ってるわよ。でもね、あなたから非常に強力な力を感じるわ」 「力、ねえ」  そんな事いきなり言われても何と言えば良いんだ? と言うか、魔法少女ってあれだよな、政府に所属していて魔物が出現したらその対応をするっていう。 「てか、魔法少女ってあれだよな。魔物を退治している、不思議な力を持つ女の子」 「ええ、そうよ。大体は政府の魔法省っていう組織に所属してる子たちね。魔法少女って突発的に誕生するものだから」 「でだ。何で俺の所に来たんだよ」  魔法少女探しなら他に当たれ……と言いたい所だけど、魔法少女については実際俺はあまり納得してない。  対抗できる唯一の手段とは言え、年端も行かない女の子を戦わせるんだから。その分、国からは特別な支援がされてるらしいけどな。 「さっきも言った通り、あなたから非常に強力な力を感じるのよ。だからなれるわよ、魔法少女」 「……男なんだがなあ」 「それについては私も分からないわよ……普通こういうのは10代前半の少女に多いんだけど、あなたは特殊すぎてね」  俺も分からん。と言うか、力を感じるつったって俺自身は何も感じないし。 「それでどう? なってみない?」 「どうって言われもな」  仮に魔法少女となったとして、俺はどうなるんだ? 政府に所属する羽目になるのは勘弁してほしいぞ。女の子しか居ない中に俺みたいなやつが居たら犯罪だろ。 「政府には行きたくないぞ」 「それは分かってるわよ。魔法少女って言ったって全員が魔法省に属してる訳じゃないんだから」  話を聞く所では、魔法少女には主に二種類あるようだ。  一つがさっきも言った通り魔法省に属する、魔法少女たち。これはテレビとかSNSでも結構話題になるから知ってるだろう。  で、もう片方っていうのが野良の魔法少女。要するに組織には属していない魔法少女たちである。自分の意志で動いて、魔物を倒したりしてる少女も居るそうだ。  ただ、野良の魔法少女と言っても色々なパターンが有る。  魔法少女として覚醒はしたけど、戦いたくもないので魔法については忘れ、日常を過ごす少女や、自主的に力を奮って魔物を倒す少女など。  ただし、野良というのは当然国からの支援も何もなく、ただでさえ命がかかっているのに、支援なしだと更に危険度は増すので好き好んでやる人はレアだ。 「なるほどなー確かに野良なら自由に動けそうだな」  女の子たちを助けられる力は手に入る……確かに魔法少女については納得してないし、絶好の条件だろう。 「まあ、あなたを魔法少女にしようとしているのには、もう一つ理由があるのよ」 「もう一つ?」 「ええ。魔物というのは魔力に惹かれるのよ。つまり、魔法少女たちに襲いかかるのはそれが理由。一般人でも女性は魔力を多めに持ってるから狙われやすい」 「ほうほう」  魔力に惹かれる、か。 「それは男性にも言えることなのよね。男性も女性よりかは少ないけど魔力を持ってる……だから魔物の狙いの対象にもなる。そしてあなたの魔力は非常に多い」 「多いのか……」 「ええ、近年稀にすら見ない逸材よ。で、魔物は魔力に惹かれると言ったわよね?」  その言葉に頷く。そこで、俺も理解することとなる。 「要するに俺は狙われやすいってことか」 「察しが良くて助かるわ。魔物は魔力を取り込んで自分のものとする。魔力が多ければ多いほど、魔物は強くなる」 「……」 「狙われやすいっていうのもあるけど、あなたのその魔力を悪用される可能性が考えられる。だから守るためっていうのがもう一つの理由よ」  なるほどな。理解は出来た……狙われやすい、悪用される可能性。確かにこれは襲われたら厄介な事になりかねないな。 「でもさ、魔法”少女”だよな? 俺男なのに少女って可笑しくないか」 「いやまあ、それはそうだけど……物は試しってことでどうやってみない? 魔法少女になったからと言って無理やり戦わせたりはしないわよ。ぶっちゃけ、自衛できるようになれば安心できるんだから」  自衛が出来るか出来ないかなら確かに、出来た方が良いな。俺だってニート生活満喫してるけど、死にたくはないし。 「まあ、やってみるか」 「良かった。じゃあこれが変身デバイスね」  そう言ってラビが俺に渡してきたのはどう見てもスマホな四角いやつだった。  変身デバイスがスマホってまた現代的だな。まあ、他の魔法少女の変身デバイスを見たことはないから何とも言えないんだが。  そうそう、この兎のぬいぐるみの名前はラビっていうらしい。ラビットのラビだったら凄い安直だな……。 「スマホじゃん」 「一番馴染み深そうな物を選んでみたわ」 「うん、確かに馴染み深い。ってか、アンテナ5本立ってるのか」  スマホ型デバイスの画面を見ると、電波の強度を示すアイコンが5本立っていて非常に良好だということが分かる。  まんまスマホである意味凄いわ。普通にブラウザも使えるって、どういう原理だよ。 「見た目だけじゃないわよそれ。普通に電話番号入れれば繋がるし、ブラウザも使えるわ。ゲームも出来る。そして容量は無限大よ」 「魔法ってスゲー」  俺スマホは解約してるから丁度良いのかも知れないな。何処の回線を使ってるのか気になるけど。 「で……このデバイスをどうすれば良いんだ?」 「デバイスを握って、心を落ち着かせて目を瞑って深呼吸するのよ。そして変身したいと思うの。そうすると、変身するためのキーワードが浮かび上がるはずよ」  ラビの説明を聞き、俺はデバイスを握る。心を落ち着かせて、深呼吸……そして変身したいって思うのか。  自分を守れる力もほしいが、やはり他の魔法少女たちも守れるような力も欲しいよな。  すると―― 「――ラ・リュヌ・エ・レトワル!」 『SYSTEM CALL "CHANGE" KEYWORD,OK――LA LUNE ET L'ETOILE――』  ラビの言う通り、自然と思い浮かんだキーワード。それを口にすればデバイスの方からも何か音が聞こえてくる。  そして次の瞬間、俺の視界は真っ白に染まったのだった。
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