6人が本棚に入れています
本棚に追加
プロローグ~堕落王家がマトモになる方法~
「わたくしは『ピーナ(桃)のジュースが飲みたい』と言いましたのよ?!持っていらっしゃい!!!」
というキンキン声に私(現マルアール王ダラス)は深く溜め息を吐いた。
娘であるマルアール王女アイシェはとかくワガママで、侍女や女官泣かせだ。
「陛下!ラミオス王子がまたセレノ男爵令嬢に手を出してご懐妊だそうです!」
「…え?またか…」
私は額を押さえた。
王太子ラミオスは凄まじい女性好きで、年一で子供ができる。
後宮がハーレム状態で、ハッキリ言って『気持ちが悪い』
私は王妃一筋なのだ!
マルアールは小さな島国の片割れだ。
隣のナスタリアなんか目ではないほど裕福で料理も美味い。
ルテシー辺境伯家に生まれ、錬金術を極めて女神に昇格したリリティーゼ様のおかげで物に溢れ治安も頗る良くなった。
リリティーゼ様とご結婚なさった当時の王子アルディード様とハシュテッド公爵家のエルレット様のご尽力の賜物だ。
だが…お三方が眠りに着かれてはや千年。
"怖かった"
と伝承されるが本当なのかよくわからない。
そのため侮る連中が増えていた。
王子と王女もその内の二人。
なまじっか裕福でなんでも欲しいものが手に入るのでムダに傲慢になり私の言うことも聞かず、手を焼いていた。
だが!
王子と王女の躾をせねば…!
「へ、へ、へ、へ、陛下ぁ~!!!リリティーゼ女神が『キンキン声が煩い!寝てられるかー!』と非常にご立腹です!…如何しましょうか…?…ちなみに近衛騎士たちの何人かはリリティーゼ様に対し横柄な態度を取ったため、アルディード様とエルレット様に殴られ宙を舞い壁に当たって気絶してます…」
「…え?封印箱の中に、本当に女神様方いたの…?そして夫様方に瞬殺された、と?…もしかして、このままでは本当にヤバイ…?」
嫌な予感が身体を巡りブルブルっと震えた。
千年の時を経て神々が目覚めた。
いや、煩くて起きたなら、アイシェが叩き起こしたようなものだ。
戦神カルクゥ様と魔法神ヴァルファル様を下し、創世神レシオール様を退け愛と美の女神シェファ様と福音の女神シシリー様を配下に治め、魔王を完膚なきまでボコボコにした、とされる、あの…?
『おい!マルアール王!どうすんだぁ?!俺の平和が崩れるじゃないかよぉぉぉ!!!あの三人はゼッテェ起こすな!と言っといただろぉーーー!起きた途端『ちゃんとやってるか?死ぬ寸前までボコろうか?』とか言ってきやがったぞぉ?!ちゃんと俺はやってる!ってリリティーゼに言っとけよな!…あるでぃーどトえるれっとニヤラレチマウ…』
久方ぶりに聞いた魔王の声が震えてて、最後の方は片言になっていた。
…息子と娘、あの性格のままで女神様方に対峙して大丈夫だろうか…?
最初のコメントを投稿しよう!