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蛭児はトランクルームのシャッターを閉じ、素早く鍵を施錠した。そして、二箇所の南京錠までも施錠する。近藤睦月は暗闇の中何やら叫びながらシャッターを叩く。彼はそんな彼女に構わずに駐車場に停めていた車へと戻り、ダッシュボードに入れっぱなしになっていた彼女のスマートフォンの中身を確認した。着信履歴・発信履歴共に知らない男ばかり、SNSと照らし合わせてみれば、ホストと思われる源氏名の男とのやり取りがいくつか。
「僕じゃなくて、お金と結婚したつもりなのは知ってたよ」
蛭児は懐より婚姻届を出した。空欄となっていた夫となる人の欄には定規で引いたような文字で〈お金〉と書かれていた。無論、蛭児が書いたものである。
それから近藤睦月のスマートフォンのGPSが切れていることを確認してから踏み潰し、近くの川に投げ捨てた。それからくるりと振り向き、彼女が閉じ込められたトランクルームに向かって囁いた。
「近藤さん? 望み通りお金と結婚出来てよかったね。富める時も病める時もずっと一緒だよ? 結婚相手とね」
おわり
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