ー第1話 序の巻①ー

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ー第1話 序の巻①ー

仁義礼智忠信考悌 室町時代。里見家の伏姫と八犬士たちが様々な敵と戦う痛快娯楽の物語。 『里見八犬伝(さとみはっけんでん)』 多くの人が知っている、いや知っている人だけ知っている有名な物語である。 しかしここに描かれている『里見八ニャン伝』は、山里外れた里見村を守る為に村長の娘と8人の猫があらゆる敵と戦うスペクタル・アドベンチャー・ストーリー・・・と言いたいところだが、どうやらそうではないらしい。 8人の猫は里見村に住んでいる個性的な猫たちで、お互いに全く性格が合わない。そもそも猫というのは、自由気ままな生き物であるから、それは仕方がない。 ただ唯一共通点と言えば、8人の猫の首にはそれぞれ『仁義八行の玉』と呼ばれる玉が着いていることだった。 果たして、その玉の意味とは? そして、その玉を託された8人の猫たちの運命とは? 『里見八ニャン伝』は、そんな8人の猫たちのドタバタハチャメチャな物語である。 ーーーーー 里見村の村長である似星連太郎(にぼしれんたろう)は、ある猫を飼っていた。 その猫の名は『ニャン太郎』 ある日、連太郎はニャン太郎を座敷に呼び出した。 連太郎(以下:連)「おい、ニャン太郎。 実はお前に伝えなくてはいけないことがあるのだ」 ニャン太郎(以下:太)「はい、ダンナ様。 いきなり呼び出して何でしょうか?」 連「お前の首に着けているその玉のことだ」 太「玉ですか? これは小さい時からずっと着けていた玉ですが、これが何か?」 連「その玉はな、お前がこの家に来る前から着けている玉なのだ」 太「え? この玉はオシャレの為に着けているんじゃないんですか?」 連「だからそれを今から伝えなくてはならんのだ。お前がその玉を着けてこの家に来た時に、お前と一緒に手紙が添えてあったんだ」 太「はー、何の手紙ですか?」 連「その手紙には、このように書いてあった」 『玉を付けた猫たちよ  ◯年◯月の満月の夜に神社に集まれ』 太「随分と雑な手紙ですね。 猫たちって、僕以外にも猫がいるんですか?」 連「そんなのワシにもわからん。 その集まる日というのが、実は明日の夜なのだ」 太「えーっ、また急な! もっと早く言って下さいよ」 連「はっきり言おう、忘れておったのだ!」 ニャン太郎 コケる。 太「たぶん、そんなことだと思いましたよ。 で、場所はどこなんですか?」 連「あの里見山にある神社だ。 あそこには『猫上様(ねこがみさま)』と言う猫の神様がいるからな」 太「猫上様? なんか怪しさ満点ですね。 僕たち猫を集めてどうするんですかね?」 連「そんなことワシにもわからん」 ニャン太郎は細い目をしながら、 太「(独り言)なーんか、いっつもこの人は適当なんだよなー」 連「だから明日の夜に行ってこいよ。 ちゃんとお前に伝えたぞ」 太「へーい、わかりました。 ダンナ様!」 そして次の日の夜。 ニャン太郎は手紙に書いてある里見山の神社に行った。ニャン太郎は神社に着いたはいいが、そこにはまだ誰もいなかった。ニャン太郎は呆れた顔をしながら境内の上で横になった。 太「なーんだ、誰もいないよ。 来た猫なんて僕だけかよ」 すると神社の暗闇の中から多くの猫の目がパチッ!パチッ!と光り出して、誰かの声が聞こえてきた。 「おめーが最後の猫だよ!」 暗闇からゾロゾロと1人、2人・・・いや、7人の猫が出てきた。 ニャン丸(以下:丸)「俺は6番地に住んでいるニャン丸様だ!」 ニャン助(以下:助)「俺は5番地に住んでいるニャン助だよん!」 ニャン子(以下:子)「あたいは3番地に住んでいるセクシーニャン子だよ〜。」 ニャン蜜(以下:蜜)「あら、言うわね。 私は4番地に住んでいるキューティーニャン蜜よ!」 ニャン斗(以下:斗)「僕は7番地に住んでいるイケメンのニャン斗さんだ。 よろしく!」 ニャン平(以下:平)「俺は8番地に住んでいるニャン平だぜ。 あー腹減った!」 ニャン吉(以下:吉)「ぼ、僕は2番地に住んでいるニャン吉です」 太「初めまして。 僕は1番地に住んでいるニャン太郎です!」 丸「1番地? あーあの村長のとこの猫かよ。 へっ、偉そうに」 太「なにー! 僕は偉くなんかないよ」 助「おいおい、いきなりケンカは止めなよん。 そんなことより、これで全員かなん?」 平「お前さっきから『よん』とか『なん』とか言って何んなんだ? あー腹減った!」 助「お前こそん、さっきから『腹減った腹減った』ってうるさいんだよん」 太「僕たちをここに呼んで何をするんですかね?」 子「さ〜ね〜? あたいらをど〜するのかしらね〜?」 蜜「ってかあなたは、何でさっきから江戸弁なの?」 子「ちょいとあんた! さっきからあたいにケンカ売ってんのかい?」 斗「きっとさー、僕らになんかご褒美があるのさー」 丸「なんだ? このキザ野郎は?」 吉「ぼ、僕はお家に帰りたいです・・・」 蜜「声小っちゃ!」 助「お、待てん。 神社からなんか出てきたよん?」 8人の猫が話をしていると、暗い神社の扉が開いて中が光り出した。するとその神社の中から、白装束(しろしょうぞく)を着た猫が笑いながら出てきた。 猫上「ホッホッホ! 8人の猫たちよ、集まったかな?」 それは、この猫たちを集めた『猫上様』だった。 ーーーーー と、まーこんな感じで始まりました。 『里見八ニャン伝』 この怪しい猫上様は、一体何者なんでしょうか? そしてこれから8人の猫たちはどうなるでしょうか? 次回「序の巻②」をお送りします。 猫上様が8人の猫を集めた目的とは? お楽しみニャン!
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