ボタンと蜂蜜の、そのあとで

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ボタンと蜂蜜の、そのあとで

 蜂蜜を使った翌日、王宮は大騒ぎになった。なんと大量の蜂蜜を流したせいで、下水管が詰まり、階下が水浸しになったのだ。  その原因がルイの部屋の浴室だとわかり、王宮の従者たちがこぞって部屋に駆けつけてきた。ルイは、いま貴族のあいだで流行っている蜂蜜美容風呂を試してみたが、蜂蜜の量を間違えたのだととっさに際どい嘘をついた。従者らにはどうにかそれで誤魔化せたようだが、俺は先代のルイ・ル・グランである祖父の顔をまともに見ることができなかった。  背筋に悪寒が走った。念入りに研いだ刃のような、いつにもまして鋭い眼光。目を合わせた瞬間に刻み殺されるような気がした。――絶対に勘づいてる。俺たちが蜂蜜を使って何かやばい――いや、エロいことをしたことを。  一方のルイは、これだけやらかした割にいたく上機嫌だ。どうやら昨晩、予想以上に初エッチが上手くいったことに、至極ご満悦のようすである。 「ユリウス、僕ね、いますっごく幸せ。おかげさまで、僕たち無事セックスできましたって、国中に触れ回りたいくらい」 「――おおおおいっ!! 自分が何を言ってるかわかってんのか! そんなのが国中にバレたら、俺はこの国から永久追放だぞ!!」  冗談だよー、とルイは不満げに頬を膨らます。嘘だ! もし俺が反対しなけりゃ国中に公布を出しそうなノリだったくせに!  この蜂蜜事件に加え、俺にはさらにもうひとつの懸案事項がある。
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