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明日、国中の上流貴族を集め、宮廷舞踏会が開かれるのだ。ルイが正式に王位を継承してから初の宮廷舞踏会であり、新王のお披露目という意味合いもあるのだろう。
だが、宮廷舞踏会の真の目的は別のところにある。つまりこれは、公式なお妃選びの場でもあるのだ。貴族の娘たちもそれを承知の上なので、一段と派手に着飾り、あの手この手で国王に近づいてくる。
いままさに、俺との幸せの絶頂にあるルイが娘らの誘惑に屈するとは思わないが、それでもやっぱりルイに近づかれるのはいい気分がしない。
……と思っていたものの、当日、蓋を開けてみれば、状況はまるで逆転していた。
いま俺の目の前には、ギリギリまで胸元を広げたご令嬢の人だかり。鼻にかかった甘い声。たぷんたぷん揺れる、まん丸いおっぱいの列。逃げ出そうとしても見事な連携プレーにより、あざやかに俺の退路を断っていく。
「ユリウス様はぁ、ここでの生活には慣れましたの? いやぁん、黒い瞳ってとってもセクシィ♡ 吸い込まれてしまいそう♡」
「剣術の試合、お見事でしたわ♡ わたくしたち、ユリウス様を応援しておりましたのよ♡ やだぁっ、筋肉もすごぉい♡」
「ひとりずつ、順番に踊ってくださいね♡ 途中で逃げたらお・仕・置・きですよぉ♡」
これは一体どういうことなのか。ちらりとルイを盗み見ると、玉座の上から氷のように冷たい視線を投げかけてくる。一瞬で、俺の背筋が永久凍土と化した。
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