ボタンと蜂蜜の、そのあとで

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「ユリウス様って王族でいらっしゃるのに、気取らなくてお優しくて、お話も面白いし――ずっとお近づきになりたいと思っていましたの♡ ユリウス様の奥様に選ばれる方が羨ましいですわ♡」  そうか。彼女たちと王宮で顔を合わせたとき、あまりにもルイが冷たいので、俺が気を遣いあいだを取り持ったことが何度かあったのだ。そのせいで、相対的に俺の株が上がってしまったらしい。  おそらく長年の母親への不信感のせいだろう、ルイにはもともと女嫌いなところがある。近頃、だいぶ母子関係も改善してきたようだが、それでも女性に対し――特に自分に媚を売るような女に対しては、あからさまな嫌悪感を示す。だから令嬢らはルイが怖くて近寄れない。  俺が叙階を済ませていることはまだ公にしていないので、彼女らからすれば、俺は王位継承順位の第二位だ。物件としては悪くないのだろう。  その夜、案の定ルイの機嫌は史上最悪だった。背中から、ゆらゆらと負のオーラが立ちのぼり、再び悪魔を呼び出してもおかしくないネガティブさだ。 「ル、ルイ……? ほ、ほら今夜もイチャイチャしよ? こっちにおいで、ねっ?」  両腕を広げて明るくルイを呼んだが、寝台の端から、じとっとした視線を投げてくるだけだ。ふいっ、と再び俺に背中を向ける。  背中におずおずと近づき、肩に顎を乗せる。
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