ボタンと蜂蜜の、そのあとで

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「ルイが大好き。俺は男の子のルイを好きになったの。おっぱいなんて要らないし、世界中でルイしか可愛くないよ」  胸の中でルイがすんすんと鼻をすする。鼻をすする音まで可愛く聞こえるなんて、俺もかなり重症だ。 「……そんなこと言っちゃって、後悔しない? 僕だってきっとそのうちヒゲとか生えるよ? 声だって低くなるし、どんどん可愛くなくなるよ?」  そう言われて、ルイが歳を取った姿をはじめて頭に思い浮かべてみた。  ルイは父親に外見が似ている。浮世離れした、森の精霊のように綺麗な人だ。そのうちきっとルイもああなると思う。だから成長したとしても、綺麗以外にない。  もし万が一もっと男っぽくなって、長老みたいな立派なヒゲが生えたとしても――その中身が、へそ曲がりだけど純粋で、泣き虫な上に怒りん坊で、俺の前だけ甘ったれのルイのままだったら、それはそれで可愛いと思う。 「ルイがどんな姿になっても、いまと何も変わらないよ。ずっとルイしか好きにならない」  ルイが顔を上げる。濡れた髪が顔にべったり張り付いて、目の周りが真っ赤。いじらしくて可愛くて、顔中にキスを落とした。そういえば、いつかオッサンになるのは俺も同じだ。 「ルイだって俺でいいの? 俺だってそのうち、体臭がオヤジになって、ツルッとハゲて、どーんと腹も出てくるかも」 「……腹が出るのは、気をつけていればどうにかなるんじゃない?」  意外に冷静だ。毎日腹筋鍛えよう。
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