34.白いドレスを着る前に

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 食器を片づけても雅臣は帰ってこない。メッセージアプリにもなにも届いていない。 「ふう、忙しそう」  とうとう入浴も済ませ、ひとりでベッドルームで過ごす。  届いていた郵便物を確かめると、母からの『結婚式場とウェディングドレス』の案内をまとめた封書があった。  開けてみて、心優はまずウェディングドレスのカタログを開けてみた。 「うわ……」  真っ白でふわっとしたドレスがたくさん。キラキラの生地に、透明感あふれるヴェール。どれもこれも眩しいばかり。  これ、わたしが着るんだよね。帰還したら。いよいよ……。  どれにしようかな。どうせなら思いっきり憧れていたお姫様風にしようかな。でも大人っぽいラインも素敵。年齢的にはほんとうはこっちかもしれない。 「ボサ子のわたしがドレスか」  臣さんには絶対に真っ白な海軍の正装にしてもらうんだ。大佐の肩章を付けて、きらきらの金モールに真っ白な手袋。目深にかぶる白と黒の制帽。それで並んで欲しいな……。  そう考えているうちにひとり微笑み微睡んでしまう。 『心優、ただいま』  微かな声。でも心優は眠ったまま。 『へえ、ドレスか。うん、いいな。楽しみだよ、心優のドレス姿』  黒髪にそっと熱いキス。夢の中で感じるだけで、心優はまた嬉しいだけで眠ってしまう。  無事に帰還したらいろいろなこといっぱい。結婚式、そして素敵なドレスを着て、教会で臣さんとキスをして。そして……、新しい家でめいっぱい愛しあって。できるかな、いつ会えるのかな。わたし達のベイビーちゃん。    それから二週間後、ついに御園准将率いる艦隊が出航を迎える。
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