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そんな大振りに、ロッドを振って。大きな男の人はいつだってそこが一瞬がら空きになる。大男同士ならいざしらず。貴方より小柄だからそこにいける。
その懐へと心優も低い姿勢からダッシュ。振り下ろされそうなロッドに恐れず、突入する!
うまくいく時はいつもそう、なんの邪魔もなく、かっちりとなにもかもがはまったように、するっとうまくいくもの。いまがそれ。
父の懐に入ったと肌で感じた後は、いままでどおりに勝手に身体が動く。
でも父の襟元、腰を掴みながら、心優は泣きたい気持ちになっていた。
――お父さん、わたしがこうできるように。ここだけが隙だと気がつくように、わざと、わざと。教えてくれたんだ。
これも実は園田教官が仕込んだ『こうなればいい』という正解ありきの模擬戦のやり方だとわかっていて、心優はありったけの力を込め、ありったけの声を張り上げる。
『ヤーッ!』
空手は父が祖父が、柔道は兄が教えてくれた。
ドサッと大きな音が道場床に響く。
―― やった、うそだろ。
―― マジか、やっぱすげえ。
道場にざわめきが広がっていく。だが心優はまだ油断しない。
ここで気を緩めたら、またこの大魔神からしっぺ返しを喰らう。今度こそ腰のロッドを抜き、いつかのように大男の身体の上に乗り上げる、ロッドで両肩を押さえつけた。
「心優……、そうだ。あの一瞬の隙によく気がつき、入ってきたな。あれを制覇してこそだ。素手でも恐れず、自分の得意とするもので、そして俺をギリギリまで引きつけるまで焦らず落ち着いて動かず見極める。よくやった。だが女の腕では制圧に限りがある。前回もそうだっただろ」
「吉岡海曹! こっちにきて!」
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