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父が言いたいこと、最後に心優に踏まえて欲しいことがわかって、すぐに相棒を呼んだ。
「そうだ。すぐに力ある男を頼れ。それが女性隊員には常に念頭に置いて欲しいことだ。男の力を借りなくても、女でも一人前に出来るようと意地を張らずに。あの時、護衛官ではなくとも雅臣君に協力を仰ぐべきだった」
「そうでした……。もう二度とあの失敗はしたくないです」
「ハワード少佐はもう大丈夫だ。これでわかっただろう。いままで通りに彼の実力を信じて、いまのように心優は心優の目の前のことに必死になれ。このチームワークで充分だ」
あちらも後藤中佐を見事に撃退している。さすが、ハワード少佐! 怪我の心配をしていたけれど、これで絶対に自信を取り戻したと思う。きっと、これも父の作戦だったに違いない。
そして光太がすっ飛んでくる。
「吉岡。……心優は女だ。制圧には限りがある。かといって、おまえはまだ新人で細すぎる。二人一緒に制圧するんだわかったな」
心優に押さえつけられたままのくぐもった声、そして情けなく押さえつけられた大魔神の姿で、駆けつけてきた光太を見上げて父が教示する。
「イエッサー、教官。城戸中尉のアシストに全力を尽くします」
光太も護衛部で習ったとおりの姿勢で、二重の制圧姿勢を取ってくれる。
「絶対に護るんだぞ。艦長を。そして艦を。そして絶対に還ってこい。わかったな」
制圧する若い護衛官二人に、大魔神が初めて微笑む。
娘の心優だって涙ぐみそうなのに。先に光太が『はい、教官っ』なんて泣いちゃったので、心優の涙が止まる。
「行ってきます、お父さん」
「バカ、ここでは父さんじゃない」
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