1505人が本棚に入れています
本棚に追加
「あと、帰る前に……。やはり葉月さんとも一度ゆっくり話す機会を設けて欲しいんだが。これは、城戸中尉ではなくてラングラー中佐に申し込んだほうがいいのかな」
「大丈夫だよ。わたしから准将に伝えおくね。ラングラー中佐から時間の連絡が行くと思うからそこで相談して」
「わかった」
またほっとした顔に。父も親心となるとこんな案じるばかりの人になるんだなと改めて思ってしまった。
『お父さん、なに食べたい?』と聞こうとした時だった。
「園田教官!」
今度は父を呼ぶ声が背後から。声の主は金髪の青年、シドだった。黒い戦闘服と訓練装備のまま、やっと見つけたとばかりにこちらに駆けてくる。
「うわわ……」
何故か父がギョッとした顔になりわたわたと逃げたそうにして慌てている。
「お父さん?」
「心優は彼と親しいのか!」
そう言いながら、大魔神とあろう教官が娘の背後へと逃げてしまう。
心優と光太は顔を見合わせ首を傾げる。だがもうシドがもの凄い形相で駆けてくる。
「園田教官! お願いします! 帰るまでに時間外の指導もお願いします!!」
心優の目の前に来ると、心優が見えていないかのように背後にいる父へとビシッとシドが敬礼をしている。
「言っただろ。時間外はしない! フランク大尉だけ特別に指導というわけにはいかないだろ。時間内の訓練のみだ!」
「俺、園田教官のような格闘技を覚えたいんです!」
「だからいまは時間内だけだ!」
「時間外もお願いします!!」
今度は深々としたお辞儀をシドがする。心優の目の前で、背後にいる父に。そして父はおろおろしている。
最初のコメントを投稿しよう!