34.白いドレスを着る前に

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34.白いドレスを着る前に

「な、なんなの。お父さんこれ」 「この前から訓練が終わるとこうしてな、頼む、頼むと」  ああ、もうこう思ったら真っ直ぐのシドらしいと心優も呆れる。 「心優!」  頭を上げたシドがやっと心優を認識した。 「おまえからも親父さんに頼んでくれよ!」 「でも、父は横須賀からわざわざ頼まれて来ているわけだから、そんな勝手に動けないよ」 「おまえだけ親父さんから直伝のものいろいろ伝承していてずるいぞ!」 「はあ? ずるいってなによ! そっちだってフロリダで本格的な訓練をしてきたんでしょ。子供の頃だってプロ並みのご家族から仕込んでもらってきたんでしょ」 「それはそれ。これはこれ! 俺はいま園田教官にみっちり鍛えて欲しいんだよ!」 「だったら。横須賀に転属願い出しちゃえばいいじゃない!」 「はあ? この俺に小笠原を出ていけって言うのかよ。おまえ、俺と離ればなれになってもいいのかよ!!」  え、そういうこと。ここで言っちゃう? お父さんの目の前で言っちゃう? 心優の身体が一気に熱くなる。今回は甘い熱さじゃなくて、焦りの熱さ!  光太はなんとなく感じているようだったから『うへえ、そういう態度ここで出しちゃう?』と仰天していたが、父はもう『なにいってんだこの若僧は、結婚した娘の目の前で』と怪訝そうに顔をしかめている。  結婚した娘に、婿殿以外の男からの猛攻。そう案じたに違いない。
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