34.白いドレスを着る前に

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 だが心優は横須賀に転属ではっと気がつく。 「あ、そうだ。あのね、シド。横須賀では一ヶ月に一度、第三日曜日に、父を始めとした格闘教官の特別講習会というのをやっているらしいの」  ね、お父さん――と振ると、父もハッと我に返ってシドに言い放つ。 「そ、そうだ。横須賀で第三日曜に特別講習会やってるからそれに来ればいい。ただし申し込みが必要だ。一週間前までOKだ。どの基地の者でも部署の者でも受け入れているから」  シドの目がきらきらっと輝いた。 「本当ですか、それ!」 「た、ただし! もう出航前だから今月は受け入れ無理だ。帰還後に来い」 「わかりました。絶対に絶対に行きますから、教えてくださいよ!」 「お、おう! 待ってるぞ。その時は存分に教えてやる!」  やった、やったと拳を握ってシドは大興奮だった。もう、いつもの子供っぽい彼になっちゃっているので心優はつい微笑んでしまう。 「なあ、心優。おまえ、彼とどんな関係なんだ??」 「お姉さんと弟? あるいは親友……みたいなものかな、ずっと一緒に訓練をしてきたから」  臣さんとも仲良しだよと伝えると、父がそうかとほっとした顔になる。ほんとうにお父さんとなると心配事でめまぐるしいらしい。  そんな父に心優はちょっとだけ小声で伝える。 「ほら、いろいろ独りの時が多くて。寂しがり屋なんだよ」  俺と離ればなれになってもいいのか――なんて、ほんとうはシドが離れたくないというのがわかっちゃうだけに。  でもそのひと言で父にも通じたようだった。その途端、父が追いかけられていた困った教官から、心優のお父さんの顔に戻ってやっと娘の背中から前に出た。 「シド……でいいか」  父が彼を名で呼んだ。シドもびっくりしたのか、でも興奮していた姿を収める。
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