34.白いドレスを着る前に

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「今度、心優とでも、雅臣君とでもいい。沼津にも遊びに来いよ。吉岡もだ。娘をよろしく頼むな」  二人の青年に、あの大魔神がぺこぺこと軽くお辞儀をしてくれる。  もう、シドも光太もものすごく感激した目に輝いて『絶対に行きます!』と大喜び。  ああ、もう。なんだか夫とお父さんのほうが、彼等にモテモテで、官舎の自宅も沼津の実家も、お目当ては友人の心優ではなくて夫と父親という男達の暑苦しさに苦笑いしか出てこない状態に。  でも。父も察してくれたんだなと心優は心の奥で感謝。複雑な事情で大将の息子という地位がありながらも、どこか孤独な青年の在り方を気遣ってくれたのだと。  やっとシドが納得して『失礼いたします』と敬礼をして父から離れていった。 「はあ、やっと諦めてくれた。助かったよ、心優」  ここ数日、すごい猛アプローチだったと訓練場外でへとへとになっている大魔神に、心優と光太は笑ってしまっていた。    ―◆・◆・◆・◆・◆―    出航前、それぞれの訓練も大詰め。これを終えると、今度は出航準備に入る。  空母に集まる物資、燃料の詰め込み。艦載機のチェック。カフェテリアのオープンなどなど。  また雅臣は指令室を整える支度のため、しばらく艦や基地で泊まり込みになる。  そういえば去年、転属してきたばかりの雅臣が髭で真っ黒の顔になって『二日も風呂に入っていないから近づくな』と怖い顔をしていたのを思い出してしまった。  またあんなになるのかな……。  そろそろ新婚夫妻の甘いひとときもお預けになりそうだった。  官舎に帰宅するが、いよいよ雅臣のほうが残務に追われるようになっていて、自宅は真っ暗だった。  彼の帰りを待っていたけれど、どんどん時間が過ぎていく。致し方なく心優はひとりで食事をする。
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