35.小雨の空母搭乗

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 屋根も窓もガラス張りの船内。曇天が重くのしかかってきそうなガラス屋根にぽつぽつと雨粒が落ちてくる。 「はあ、雨の出航になりそうね」  御園准将も溜め息。  天候に合わせ、どうしてか船内は重苦しい空気だった。  まるで、今回の任務はいまからこのような晴れない空につっこんでいくものだと物語るかのように。  御園艦長がブリッジ艦長室入り。ついに空母が出航をする。  その時にはもう波が荒れていて、大雨になっていた。甲板に打ち付ける雨音が、艦長室の開いている丸窓から聞こえてくる。  潮の匂いに荒い波の音、そして雨の匂いと風。日中なのに甲板には照明がつけられる。  艦長はデスクにおちついて、出航準備が整う報告待ち。心優と光太も入ってきたばかりの艦長室にて、自分たちのデスクを整えている最中だった。  前回同様、艦長デスクのすぐそばに心優と光太で並ぶ形で配置した。 「心優、部屋はどう」 「はい。前回と同じお部屋ですので、かえって懐かしいです。また窓から様々な海と空の景色を見られると楽しみにしていました」 「光太はどう。指令室の男性同士の相部屋だけれど。大丈夫かしら。初めての航海で、先輩ばかりでしょう。ストレスがたまるぐらいなら、管制室クルーが寝泊まりしている階下の部屋を用意してあげるわよ」 「大丈夫です。秘書室の先輩達だから慣れていますし、それに最近、フランク大尉がよくしてくれるので頼りにしています」  まあシドが? 葉月さんもちょっと驚いたようだった。
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