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橘大佐が描く指揮に、御園准将は「わかった」と頷くだけで、口を挟むことはない。
以前なら、彼女が先手を打ってどんどん提案していたと思う。こういう姿を見ると、本当に彼等に譲って自分は手を引こうとしているんだなと心優は感じている。
橘大佐もブリッジの階段を上がり始めると、溜め息をついた。
「そうだな。こんな時、専門にやってくれるアグレッサーが必要だと俺も思うわ。マジで作るなら早く実現して欲しい」
橘大佐にもその旨はもう伝えられているようで、今回の大陸国の攻撃に遭い、切実に感じているようだった。
御園准将はそこでは、橘大佐と暫くは見つめ合っていたが、なにも言わない。この人達も、もう目で会話ができちゃうんだなと心優も思っている。そのパートナーとしての仕事も、そろそろ解消かという空気も感じていた。
だからなのか、二人の間に静かな寂しさを漂わす波もある。でも、まだそこに本人達も周囲の人間も触れない。
それぞれの行く道を決めている覚悟もありそうだった。
指揮官たちはブリッジの上階へと階段を使って移動する。
甲板が見渡せる管制室へと入り、コンバット訓練の準備をする。
ブリッジの指揮カウンターに雅臣がヘッドセットをして立つ。
橘大佐もすぐ隣のカウンターに、そして御園准将は、最前線へ出すと決めた二機の様子を見たいのか雅臣の横に立った。
「あなた達も見ておきなさい」
付き添い護衛でついてきた心優と光太にもヘッドセットが渡される。ただしマイクは使うなと頭の上に上げた。
「うう、なんかすげえ緊張してきました」
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